参ノ巻
文櫃
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「おや?高彬殿頬に傷が・・・」
「猫にでも引っかかれたんじゃない?」
「・・・ええ。黒い毛並みの大きな猫に」
「これ瑠螺蔚やっ!おまえはなんということを・・・!妻は黙って夫に仕えるものですぞっ。それを・・・」
「ちょっと待った!誰が妻よだれが」
「おまえの他にいるわけ・・・いや古来より英雄色を好むと言う・・・高彬殿、側室は今のところどういう風に?」
「え?いや僕は・・・」
「父上何いってんの!祝言もあげてないウチから舅根性出さなくて良いのよ!高彬、あんたも真面目に返さなくて良いから」
あたしは脇息に肘をついたまま、ぱたぱたと手をあおいだ。
右隣に高彬、前には父上がいる。
高彬の用件は、父上が佐々家に来ていると言うそのことだった。
あの脳天気な父上でもまぁ今となっては唯一の血の繋がりのある肉親、あたしは顔でも出してやるかと高彬を伴い客室を訪った。
「しかし瑠螺蔚や。大事なことですぞ。おまえも、妻は一人だなどと我が儘を言わず、前田の一の姫として、大きな心を持って・・・」
思わずあたしはハッと笑った。
「大きな心って、なに。夫がそこかしこでいい人作るのを屋敷でずっと我慢するのかいいことなのかしら?わかってると思うけど、あたし、そんな女じゃないからね。将来的に誰かと祝言あげなきゃならないとしても、側室いっぱいの男なんてまっぴらごめんよ!」
「瑠螺蔚さん!」
いきなり、横の高彬があたしの右手をとった。ナンダなんだと思ううちに左手もとられて一緒に胸の前で握りしめられる。
「僕は瑠螺蔚さんひとりだけだよ。忠宗殿が側室云々と言っていたけれど、側室は娶らない。浮気もしない。だから・・・」
い、いやあのあなたね、父上も、いるんですけど・・・!
あたしはなんだか無性に恥ずかしくなって声も出せず、ただただ鬼灯のように真っ赤になった。
「あ、ご、ごめん」
あたしの珍しくしおらしいと言えなくもない態度に、高彬も自分の発言と近づきすぎたお互いとおまけに父上の存在に我に返ったのか、ぱっと手を離すと前のめりだった身体を戻した。
父上はそんなあたしたちを見て、うむ、うむと満足げに頷いている。
「何よ、父上!夫はあたしに選ばせてくれるって言ったじゃないの!」
そんな父上が憎たらしくて、顔の赤みも抜けないままあたしは怒鳴った。
「なんで勝手に高彬と証
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