Episode 2 狼男の幸せな晩餐
チョコレートペイン
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ンティコア……名の意味するところは"人喰い"である。
腹が減れば同族でも殺して食べる、まさに魔物の中の魔物なのだ。
凶悪な高位肉食系魔獣の代表格であり、同時に"黒き知恵の守護者"と呼ばれるほどの知性体である。
ノルベルトほどの猛者をしても、正直に言えば尻尾を巻いて逃げ帰りたい相手ではあるのだが……
いざとなれば自分が食われている間にキシリアを逃がすべきか?
その種族特性ゆえに死なないとはいえ、殺されるのはやはり怖い。
そんな葛藤をするノルベルトに、キシリアが冷めた目をしたままおずおずと話しかけた。
「あの……あんな人ですけど、フェリクシアは本当に私の同棲相手なんで問題ないです。 今日はもう帰ってもらえますか?」
「け、けど!!」
マンティコアであるフェリクシアからすれば、キシリアは物理的に"捕食対象"に入るのだから、このままキシリアを置いて逃げるわけにはゆかない。
「正直、発情したノルベルトさんのほうが危険だと思います」
「……そうだな」
だが、その後に続いた台詞に、ノルベルトはただ項垂れるしかなかった。
正直、自分のやっていることが間違っているのはよく理解している。
反論する余地も無かった。
――帰るか。
意気消沈したまま、もそもそとパンツを穿きなおす姿は妙な哀愁が漂う。
「えっと……ノルベルトさんは仕事の相手としても大事な人なんですが、それ以上は無理です。 ごめんなさい」
そう告げると、キシリアはまだ湯気を立てている蟹のグラチネを防水・保温の魔術がかけられた朱色の器に詰め込んで、風呂敷で包んでからノルベルトに差し出した。
正直、同情の余地も無いほどひどいことをされたのだが、妙に憎む気にはなれなかった。
自分の好きな相手がいたならば、多かれ少なかれ襲ってでも自分のものにしたいと思うのが人の心というものである。
そこに先ほどの台詞へのツッコミを入れる声があった。
「うわぁ、キシリア。 お姉さんでもその台詞はキツいとおもうなー」
「……あ」
言われて気づく。
先ほどの台詞は、「男としての貴方に興味ありません」といっているに等しい。
恋人としてみることが出来ない……一見してさほどキツい事は言ってないように思える台詞だが、実際にはトドメをさしたいのかと思うような破壊力を持っている。
ただし、"好き"の反対は"嫌い"ではなく、"無関心"であることを知っている相手にとってはであるが。
不幸なことに、ノルベルトはそれなりに聡い上に女性慣れしていた。
言った本人といわれた本人の間に、すごぶるきまりの悪い空気が流れる。
腕を組みながら一人ニヤニヤと笑うのはフェリクシアただ一人。
「まぁ、いいや。 今のでさすがにアンタの愚息も萎え
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