Episode 2 狼男の幸せな晩餐
チョコレートペイン
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アの耳に衣擦れの音が響く。
さらに太股に何か生暖かいものが押し当てられた。
――あぁ、ついにくる。
これでも元は男である。 いったい何が行われているかは容易に想像がついた。
「こんなことしちゃいけないのは判ってるんだ……でも……君が言葉だけじゃ俺を受け入れてくれないから……」
そして言い訳を口にしながら、ノルベルトの黒い剛直が、キシリアの純潔に触れようと……
不意に空気が変わった。
「誰だ! なにしやがる!!」
そしてノルベルトの腕が弾かれるようにしてキシリアから離れる。
その手には、いつの間にか3本ほどナイフが逆さまに握られていた。
しかも、重心を変えることで汎用性を犠牲にし、投げつけることに特化したナイフだ。
いったい誰のものだろうか?
こんなものは料理人であるキシリアの持ち物ではないし、蟹漁師であるノルベルトの持ち物でもないだろう。
料理に使うには取り回しが悪く、蟹漁に使うには火力が足りないからだ。
こんなものを使うのは、ほとんど知能の無い低級魔獣を狩るハンターか、冒険者狩りをする輩ぐらいだろう。
「そいつはアタシの台詞だよ、そこのワン公! なに人の嫁に手を出してやがる!」
耳に染み入るような色っぽいアルトの主に目を向ければ、厨房のドアの向こうでラフな格好をした豊満のスタイルの美女が腰に手を当てて仁王立ちになっていた。
「フェリクシア! 帰ってきたんだ! ……でも、嫁になった覚えは無いから」
あいかわらずツレないねぇ。
キシリアの微妙に牽制を含んだ挨拶に、女はため息を吐きながら軽く肩をすくめた。
「なっ、誰だお前……!? 嫁? お前も女だろ!!」
「知らないのかい? 愛があればなんでも出来るんだよ」
「そんな事は聞いて無ぇっ!!」
何が出来るかはあえて口にしない。
初夏の野山に咲き誇る純白の花の香りがしても、気にしてはいけない。
そう、間違っても深く追求してはいけないテーマなのである。
「あたしか誰か……そう聞いたよね? いいよ。 一度しか言わないからよーく聞きな」
ノルベルトを指差し、女は胸を張ってこうのたまわった。
「あたしはフェリクシア・マンティコラス・ジャシバーバ。 その娘の相方さね」
ノルベルトの顔に苛立ちと驚愕が滲む。
仕事の"相方"も恋人としての"相方"も、日本語に直すと同じ発音になってしまうが、彼女が口にした東方魔族語の発音は恋人としての意味を持つほうの"相方"だった。
「相方だと!? 信じられるか! 俺が立ち去ったら、キシリアさんを美味しく頂こうって腹じゃないのか!?」
「あんたにだけは言われたくないネェ」
楽しそうに喉の奥でクックッと嗤うフェリクシア。
その名前からすれば彼女の種族はマ
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