Episode 2 狼男の幸せな晩餐
チョコレートペイン
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ると……
「ノルベルト……さん?」
認めたくないが、そこには狼の顔をした青年が熱を帯びて潤んだ目をしてこちらを見つめかえしていた。
「……キシリアさん、俺、もう我慢できない。 本当はこんなことしちゃいけないのはわかってるけど、どうしても会いたかったんだ」
熱い吐息がキシリアの髪をそっと撫でる。
腰のあたりには、男性特有の硬いモノが押し当てられている感触があった。
あ、意外とちっさ……じゃなくて! ――発情している!!
キシリアはようやく通信機の向こうで何を叫ぼうとしていたのかを理解した。
――まずい! 発情期だ!!
人間と違って人狼には明確な発情期が存在する。
それはまるで女性の月のもののように一ヶ月の間の何日か発生し、どうにも女性を抱きたくて仕方がなくなるらしい。
そのため、人狼の男たちは発情期になると一般女性に近寄らずに花街に篭って暮らすのだと聞いている。
――そう、それが普通なのだ。
ただし、"本命のいない人狼は"と頭につくが。
「えっと……ご飯ならあとは冷めるのを待つだけなんですが」
「判ってるだろ? 俺が、君のことをどんな目で見ていたか」
今も目は病気かと思うほど血走り、その長い口吻から吐き出される荒い息は、色があれば見事な桃色をしているに違いない。
意味するところなど、むしろわからないほうがどうかしている。
「あの……ご飯が冷めてしまいます」
「しらばっくれるなよ。 確かに君の作るご飯はとんでもなく美味しいけど、俺が本当に欲しいのはソレじゃない」
おそらく、その焼けつくような求愛の衝動に耐えかねるのだろう。
かすれる声で囁きながら、ノルベルトはその体を悩ましげに身じろぎさせた。
だが、野生動物がそうであるように、人狼は雌の許可が無い限り抱きついても腰を振ることが許されない。
普通の人間の雄などよりよほど紳士的なのだ。
だが、その葛藤が、若い雄である彼を拷問のように苛むのだろう。
「ごめんなさい。 私、その、そういうの無理です!」
「なんで!? どうして俺じゃダメなんだよ? そんないきなり全否定しなくてもいいだろ!? 今すぐ番になってくれとは言わない! せめて俺のことをもっと知ってほしいんだ……なぁ、お願いだから拒まないでくれ」
抱きしめた腕を放し、今度は前に回って真っ直ぐに目を覗き込む。
だが、その切実な眼差しに、キシリアは応えることが出来なかった。
全否定も何も、最初から無理が多すぎた。
なにせ、今は女の体とはいえ、元は男の魂である。
「無理です。 たぶん……理由を言っても理解してはもらえないと思います」
「そんなの、聞いてみないとわか
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