参ノ巻
文櫃
1
[3/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
界から消えたと見るや否や隣の襖をぶち開ける勢いで開いた。
「速穂児!」
「前田の姫がそんな格好で入ってくるな!」
「あたしの格好なんてどーでも良いのよ!あんた由良を追って!ほら今すぐよはやく急いで!」
「おまえ・・・」
「こっそりついていって、もし三浦が由良になにかしようとしたら守って。お願い」
あたしは速穂児ににじり寄った。
「あたし散々脅したし、髷落としたし、あいつ、逆恨みしてもしかしたら由良になにかするかもしれない」
「なにやってるんだ・・・そういうことは俺がするから言え」
「そういう問題じゃないわよ。見たのも偶然なら斬ったのも勢いで・・・ってそう言う話じゃないってば」
「おまえは由良姫をひとりで行かせたんじゃないのか」
速穂児は言った。
やっぱり、盗み聞きしてたわね。隣だから仕方ないけど。
「それとこれとは話が別なの。ひとりで行かせたのは由良の気持ちを尊重しただけ。伴人だけじゃ心許ないでしょ。そいつがどれぐらい腕が立つか知れないし・・・由良は三浦と話す時伴人を遠ざけるかもしれない。その点隠密なら大丈夫!速穂児腕立つでしょ?三浦なんかには負けないでしょ。ねぇあんたも由良が心配じゃないの?そもそも倒れてるあんたを見つけたの由良よ?由良がいなかったらあんたはここにはいないのよ。恩人よ!恩人を助けるのは当然でしょ。あんたも男の端くれなら女は守って然るべきものでしょう?ね?わかったらお願い!由良のこと守ってあげて」
あたしは畳み掛けるように速穂児に詰め寄りながら捲し立てた。速穂児は嫌そうな顰めっ面で顔を背ける。
「・・・わかった。だから近寄るな」
「なっ!?」
なんですってぇ〜!?
「じゃあはやくいきなさいよ!バカ!バカ速穂」
花の乙女に向かって近寄るなはないでしょ近寄るなは!
あたしはどこどこと余所を向いている速穂児をどついてから、鼻息も荒くどしどしと足踏みをしながら自分の室に戻ろうとした。その後ろから速穂児の声が飛ぶ。
「瑠螺蔚!いつまでもそんな格好をしているな」
「あんたはあたしの父上かっ!」
振り向くともう速穂児はいなかった。
なんなのもう!別にいーわよ寝起き姿見られたって!いーだ。
「瑠螺蔚さん、入るよ」
間髪入れず声がして、返事も待たずに入ってきたのは高彬だった。
「
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ