暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
SAO
〜絶望と悲哀の小夜曲〜
Negotiation:交渉
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び出した強化外装なる代物はどうやら、ヴォルティス卿のソレよりも優先度(プライオリティ)が低いようだった。

ヴォルティスの得物は、着実に茅場の大剣の刃を飲み込もうとしている。ぴきぴし、と、巨剣の声なき悲鳴が聞こえる。

それに呼応するかのように、白銀の光は強くなっていく。

まるで、目覚めたことを喜んでいるかのように。

壊すと言う行為そのものに喜びを感じているかのように。

その光の中、ヴォルティスはこちらを見る。その黄金の両眼には、恐らくこれまでレンが見てきた感情と言うものの中で形容しがたい強い感情が浮かんでいた。

人はそれを

「レンよ、我が友よ。何を座り込んでいる………」

叱咤、と呼ぶだろう。

「辛かろう、苦しかろう、悲しいだろう。だが、それを怒りに変えろ。卿の眼前に立つ男にぶつけろ。そしてその後で、気の済むまで泣くがいい」

こんな状況、そんな場面でもヴォルティス卿の言葉は穏やかで、不思議とささくれたっていた心に清らかな水のように滑り込んできた。

暗かったレンの瞳に、再び一条の光が差す。

レンは投げ出されていた指を軽く開き、握る。

───動く。

レンはゆっくりと目を瞑る。己と《対話》するために。

レンは心の深層に、深く深く潜って行った。










レンは真っ暗な空間にいた。四方八方、何もない。壁もなければ、床もない。だからレンは立っていた、と言うよりは、浮かんでいた、と言うほうが正解なのかもしれない。

いや、何もないわけじゃない。

幽霊のようにぷかぷか浮かぶレンの眼前にはドアがあった。

いつの時代に作られたのかは知らないが、洋風で、真紅の塗装があちこち剥がれかかっているものだ。精緻にデザインされた鬼を模したドアノブが、驚くほどミスマッチだった。

それが、この真っ暗闇の世界にある唯一のもので、この世界の全て。

あぁ、とレンは心の中でため息を洩らす。

ここに来るのは何回目だ、と。

だがそれに答えてくれる者は当然ながら存在しない。だがレンはそんなことは知っている。

一匹の黒猫が、死んだ時からだ。回数なんか数えてもいない。

ドウシタ?

そんな思考にレンが囚われていると、突然そのドアの向こうから声がした。

お世辞にも綺麗な声とは言いがたい、金属質なエフェクトを孕んだ陰々とした声だ。

だが、突然発せられた声にもレンは驚かず、毅然とした声で言い放った。

力を貸してほしい。エクレアねーちゃんを殺したあいつを………

アイツヲ?

言葉に一瞬詰まったレンをからかうように、その声は続きを急かす。

殺してやりたい。

言い切ったレンのその言葉を吟味するように、声はのどを
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