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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
第二十七話 戦闘開始
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ならない。と暗に忠告しているのだ。

「貴様を一応は敵を認めたのだ。期待はずれならばすぐにでも灰すら残らんことになるぞ」

「やけに口が過ぎますね。普段の貴方ならもっと行動で示すんじゃないですか?」

「貴様……不愉快だ。劣等の分際で私の部下を愚弄するな」

先程までの機嫌の良さは何処かへ行ったかのように顔を顰める。その目が雄弁と語っていた。その黄色い肌で、黒い髪で、似ても似つかぬ無様を晒しながら我が戦乙女(ヴァルキュリア)を語るなと。

「ああ、本当に、あなたは変わってしまわれた」

気に入らない、その全く似ていない様相で、さも自分は彼女であるかのような振る舞いをする。それが気に入らんのだ。たとえ本当に彼女だったとしても、今のお前は彼女ではない。そうエレオノーレは叫びたくなる。

「まだ目が覚めないというなら“中尉”……私があなたを救いましょう」

腰に刺していた軍刀を引き抜く。左手には先程から構えていた緋々色金を、右手には今引き抜いたベアトリスの剣である戦雷の聖剣(スルーズ・ワルキューレ)を構えた。
型などありはしない。本来、櫻井螢が学んできた剣技の数々は一刀を基にしたものであり、螢は二刀流など学んでいないのだから当然だ。しかし、それに意味は無い。剣技など聖遺物同士での戦いにおいて重要視されることは少ない。
そして、その言葉と剣の構えは決定的な引き金となった。
閃光が迸る。烈しく、そして清冽に。その稲妻はまるで彼女が生きている証かの様に。
螢はつい先程、恋のような感情を自覚した。だからそれを否定したら彼女の目の前にいる軍人のようになってしまう。それは嫌だと思った。

“嫌だから、負けられない”

それだけの馬鹿みたいな理由だが、それでも嫌なものは嫌だとそう思った。だから、

「あなたにだけは負けない。それは同じ女として我慢がならない」

「ほざくな、小娘」

弾ける魔性の大火砲。紙一重にそれを躱し、その号砲と同時にタワーと教会でも音が響く。螢はそんなことに目を向けることなど無く、目の前の敵を打ち倒さんと剣を突き立て動いた。
もしこの状況でエレオノーレが怒りに視野を狭めてなければ、或いは螢が橋という他者を気にせずに闘える戦場に飛ばされることが無ければ、その様子を見ている一つの影があることに両者は気付いたかもしれない。




******




―――教会―――

「オラオラ、どうしたァ!勢いがあるのは威勢だけかァ?」

ヴィルヘルムは乱雑に、まるで狙いを定めていないかのように杭で打ち抜こうとする。
杭による面の制圧。それは威力、数、範囲といった多くの点で勝っており、司狼とティトゥスは致命傷となり得るものだけを撃ち落し、或いは躱していた。

「あの時の戦い
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