投刃と少女
とある剣士、葛藤する
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人で生き延びてきた───俺のような“卑怯もん”とは、違う。
「キリトも、さっきはありがとう。助かったよ」
「……、いや、俺は別に……」
マウントポジションを解除され、最後に相方の頭をもう一撫でしてから、ユノは俺にそう言った。
彼の素直なお礼の言葉に対し、言葉に詰まる。
キバオウの言葉を受けて、彼が《投刃のユノ》としての目的のため、この場にいるのかもしれないと……一瞬とはいえ、疑ってしまったから。
「黙ってて、ごめん」
「………」
俺が言葉を捜していると、ユノはそんな俺の態度を見てどう思ったのか───否、露骨すぎる俺の態度で悟ったのだろう、俯きがちに言った。
俺に何をしたわけでもないというのに、心底申し訳なさそうな声で。
「キリトが僕を信用できなくなったなら、それは仕方ないよ。でも、ごめん。せめて次の層に着くまでは───」
───違う、違う……!
違う。そうじゃないんだ、ユノ。俺には、おまえのことを責める資格なんてないんだ。
おまえは自分の命を危険に晒してまで、その子をここまで守ってきたじゃないか。
おまえが投剣を───得意武器を封印してまで、正体を隠し続けてきたのは。自分が《投刃》だと周りにバレることで、その子に敵意が向けられるのを恐れたからなんだろ?
だから、謝る必要なんてないんだ。おまえは俺とは違って、ちゃんと誰かのことを考えてきたじゃないか。
「……違う。違うんだ」
───本当に卑怯なのは、俺の方なんだ。
「ユノ、俺は───」
俺は自分がベータテスターだってことを、ずっと隠し続けてきて。
クラインを───この世界で初めて出来た友達を見捨ててまで、自分が生き残ることしか考えていなかったんだ───!
……だが、俺がそれを言葉にする前に。
コボルド王の一際大きな咆哮が、俺達の間に割り込んだ───
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