投刃と少女
とある剣士、葛藤する
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を打たれ、何もできずに取り逃がした……という報告は多々あった。
こちらも投剣スキルを使ってリーチの差を埋めようにも、それを主要武器として使っていた者と、付け焼刃程度の技術しか持たない者では、勝敗は火を見るより明らかだった。
そうして。
最初に誰がそう呼んだのかは定かではないが、いつしか彼はその戦闘スタイルから《投刃》と呼ばれるようになる。
やがて彼がSAOそのものから姿を消すまで、《投刃のユノ》の名前は、ベータテストにおいて初の《アイテム持ち逃げ犯》、及び《仲間殺し》のプレイヤーとして有名となっていった……。
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「ばか!ばかばかばか!なに考えてるの!?死んじゃうところだったんだよ!?」
「しぇ、シェイリ、ちょっと待っ───」
相方である少女にボコスカと顔面を殴られ続ける少年の姿を眺めながら、俺は記憶の中から《投刃のユノ》に関する情報を引き出していた。
アイテム持ち逃げ及び仲間殺しという、MMOにおいて最大の背信行為を行ったプレイヤー。元ベータテスター達にとって汚点ともいうべき存在。
今、俺の目の前にいる少年が、本当にあの《投刃》なのだとしたら。
いくら死人が出ないベータテストといえど、それまで共に戦ってきた仲間を裏切り、平気で殺した人間なのだとしたら。
キバオウの言っていたように、彼の目的はボスのLA獲得で、そのために俺達をパーティに加え、周囲の油断を誘っているのだろうか。
この少女とパートナーを組んでいるのも、いつか裏切って殺すためなのだろうか。
例えデスゲームとなった今のSAOでも、かつてのように、邪魔者はオレンジになってでも排除するのだろうか。
「最後まで気を抜くなって、自分でいつもいってるくせに。死なないでって、いってるくせに!」
だが、もし彼が───《投刃のユノ》が、目的のためなら人を殺すことをも厭わない人間なのだとしたら。
いつか狩るための獲物《ターゲット》に過ぎない少女に、そんなことを言っただろうか。自分の命が懸かっている状況で、わざわざ初心者である彼女を育て、ここまで守ってきただろうか……?
「ごめん、シェイリ。もう大丈夫だから。勝手に死んだりしないから」
───そうだ。彼は……
俺にはどうしても……この少年が、理由もなくそんなことをするような人間には思えなかった。
ベータの頃に噂されていた《投刃のユノ》と、泣きじゃくる少女を安堵させるように髪を撫でる、目の前の少年。
二人は同一人物のはずなのに、彼の実際の姿は、《仲間殺し》のイメージとはあまりにもかけ離れている。
ベータ当時、彼がどうしてあんな事件を起こしたのか、その理由はわからない。
だけど、きっと彼は、俺達が思っていたような人間じゃない。少なくとも、友達を見捨てて一
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