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魔道戦記リリカルなのはANSUR〜Last codE〜
Epic2君が差し出す手は私の心を惑わせる〜Reverse:The SuN〜
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†††Sideルシリオン†††

「あ、カート・・・」

私が振り向いたことで、私の背中に密着していたカートが明後日の方へ進んで行ったため、はやてが手を伸ばそうとする。しかし距離があり進んで行った方向も真横なため、一度車椅子を操作しなければならない手間が生まれる。だから「待った。私が戻すよ」カートの取っ手を掴み、ふと「ぶつかったお詫びに、お手伝いしようか?」とはやてに尋ねてみた。

「え? あ、いえ、いいです! ぶつかったんはわたしですし、よそ見してたのもわたしですし、それに悪いですからっ」

両手を突き出してわたわた手を降るはやて。そう、ここで私は引き下がればよかったんだ。必要以上に関わってはいけない。心の片隅ではそういう警告が鳴り続けてくると言うのに。なのに、「遠慮なら手伝わせてほしい。本当に迷惑なら去るよ」止められずに続けて話しかけてしまう。徐々に客足が増えてきた店内。はやてのようなまだ幼い子供にとって、カートや他の客に注意を払いながら車椅子を動かすという行為は、激しく力を消費する。

「迷惑どころか助かりますけど・・・。ホンマにええんですか?」

はやてもそれが判っているからか、私の提案を呑むという方に天秤が傾きつつある。そして「じゃあお願いします」はやては微笑みを浮かべ、私の提案を呑んでくれた。まずは私が持っていた籠と、はやてが押していたカートを戻し、改めてはやての籠を手に、「それじゃあ行こうか」私の後ろで待っていたはやてに告げる。

「あ、はい。お願いします」

「敬語はいいよ。そんなに歳も離れていないだろうし」

「それじゃあ・・・うん、お願いな。えっと・・・あ、自己紹介がまだやったね。わたし、八神はやて」

入口で立ち止まっていては来店する客や出て行く客の邪魔になるため、まずは店内の外周をぐるりと回るコースをはやてと2人で行く。その途中、笑顔で自己紹介をしたはやて。私も自己紹介に応じるために名乗ろうと口を開きかけ・・・・声を出さずに噤んだ。
ベルカではオーディンと騙った。この時代でもセインテスト王家の歴代の王の名を騙ろうと思った。なのに、心が軋みを上げる。私が黙ったことで「どうしたん・・・?」はやてが小首を傾げた。言うんだ。私の名は・・・歴代セインテスト王の1人で、私の祖父の名でもあるヴィーザル・セインテスト、と。だが、私の口から出て来たのは、用意した偽名であるヴィーザルという名前ではなくて・・・。

「ルシリオン。私の名前は、ルシリオン・セインテスト・フォン・シュゼルヴァロード」

ルシリオンという、本当の名前だった。私は、はやてを騙すことが出来なかった。ああ、私は・・・最低野郎だ。どんな理由であれ私はエリーゼ達を騙したと言うのに。今の私は、はやてに偽りの名前で呼ばれたくないと考えてしまった
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