一話
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とするクララを静かな声が止める。
声の主はサヤ。グレンダンの『真の遺志』にして電子精霊の原型、この世界が誕生した時から存在する少女である。
「サヤ、どういうこと?」
女王アルシェイラ・アルモニスが尋ねるがそれはそこに集まっていた者全てが持った疑問だろう。
だがサヤは答えることなく足を踏み出し、エアフィルターの境界を越えて獣に向けて歩き出した。
ニーナ・アントークはグレンダンを出て獣へ向かっていた。エアフィルターに覆われた都市の外へ出た以上汚染物質に晒される事になるが、ニーナはその身から放たれる剄の波動で汚染物質の影響を受けずに行動することが出来た。
通常の武芸者には到底不可能であるが今のニーナにはそれが可能となっていた。
嘗てツェルニを暴走させた後に憑依され、暴走し自滅する恐れもあったが遂には自分の力とすることが出来た廃貴族『メルニスク』。
幼少の頃に助け、助けられ今ではニーナ自身の一部となっている幼く名も無き電子精霊。
シュナイバルの守護神としてアントーク家に古くから君臨してきた大祖父、ジルドレイド・アントークから受け継いだ四体の電子精霊『アーマドゥーン』『ジシャーレ』『テントリウム』『ファライソダム』。これらは無数の電子精霊の集合体であるがゆえに一体であっても通常の電子精霊以上の力を武芸者に与えることが出来る。
六体もの電子精霊から力を受けそれを制御するという、電子精霊の長たるシュナイバルが、電子精霊達がこの運命に備えるため永い間にわたって導き出した最強の武芸者へとなろうとしていた。
獣へ向けて足を進めるニーナだがあの獣にどこか既視感のようなものを抱いていた。周囲に多数の都市が出現し、念威を通して演説が響き渡っているのも耳に入ってはいるが意識にまでは届かない。
(なぜだ? 私はあれを見たことが、会ったことがあるような気がしてならない)
あのような獣を見た覚えは無いが、吹き上がる炎から伝わる波動のようなものに何かを感じ、自問するニーナの内では他の者も声をあげていた。
それは雄雄しき牡山羊の姿をした廃貴族メルニスクだった。
(おおおおぉぉぉ。あれこそ嘗て我が達しようと望んだ『極炎の餓狼』、復讐の獣、そして破壊の炎)
その言葉に記憶を探るニーナ、するとグレンダンでの一場面が浮かび上がってきた。
それはある時、今と同じくメルニスクが発した言葉だった。
廃貴族となり復讐へ身を捧げようと志向していたが、シュナイバルに諭されたこともあり守護者の剣となる事を選んだメルニスク。そのメルニスクが目指した復讐の権化、それを宿した男との戦いの最中の事だった。
(気をつけろ、だが極炎の餓狼を従えた男だ)
「いや、まさか。だがやはりこの感じは……」
「そう、ディクセリオよ」
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