第二十二話 夏休みその四
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「お茶はビタミンが豊富だから」
「だよな、茶道部ってヘルシーなんだな」
「そうよね、美味しいだけじゃなくて」
「お茶か」
「そう、お茶は凄くいいのよ」
身体にいいというのだ。
「ただ。目が覚めるのは」
「コーヒーの方が上だよな」
「それはね」
「カフェインの量か」
「それが違うから」
コーヒーに含まれるカフェインはお茶の葉に含まれるものよりも多い、コーヒー豆はカフェインの塊と言っていいのだ。
「だからね」
「目を覚ますならか」
「そうなのよ」
「じゃああたしはコーヒーな」
「私はそれでもね、元々カフェインに反応しやすいし」
景子は自分のその体質の話もする。
「お抹茶にするわ」
「それじゃあね」
「塾で居眠りしないようにしないと」
景子はそれは絶対にと言った、そしてだった。
五人は塾に向かう前にその近くの公園に向かった、公園の前には幸いなことにコンビニまであった。そこでコーヒー、景子は抹茶を買ってだった。
五人でベンチに座って食べる、それからだった。
白いクーラーの効いた綺麗な教室に入った、暫くして塾の先生が来た。
初老の眼鏡をかけた男の先生だ、暗い感じのスーツが似合っている。
その背の精がこう言って来た。
「今から古典の講義をはじめますが」
「はい、お願いします」
教室にいるのは五人だけではない、他に三十人程いる。皆八条学園高等部のそれぞれの制服を着ているが知らない顔ばかりだ。
「まず古典についてお話します」
「古典の?」
「私達は今関西にいますね」
その端の方だが確かにそうだ。
「神戸ですね」
「源氏物語の舞台ですよね」
生徒の一人が言った。
「須磨の」
「そうです、あの名作の舞台にもなっています」
源氏物語の舞台は京都だけではない、その須磨もそうだし伊勢や奈良の長谷寺も舞台になっているのだ。
「そして関西弁ですが」
「関西弁?」
「関西弁がどうしたんですか?」
「関西弁は古典の言葉が基になっています」
先生が言うのはこのことだった。
「都の言葉がそのまま関西弁になったのです」
「じゃあ俺達古典の言葉喋ってるんですか」
「そうなんですね」
「そうなります。ですから源氏物語も」
古典で最も難しい作品とさえ言われている。
「関西のおばちゃんの言葉と思って下さい」
「関西の?」
「おばちゃんのですか」
「はい、そうです」
そう思っていいというのだ。
「簡単に考えて下さいね」
「けれど勉強ですよね」
小柄な女の子が怪訝な声で問うた。
「そうですよね」
「その通りです」
「勉強なのにですか?簡単にって」
「リラックスしろということです」
そういう意味で簡単に、というのだ。
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