外伝その三〜海鳴市・後編〜
[3/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
な表情をしながらもそう答えた彼女は「お風呂に入る」と言ってその後すぐに道場から出て行った。
士郎「………ライ君。」
美由紀の気配が遠のき、道場にライと士郎とシグナムしかいなくなってから士郎は口を開いた。
士郎「君は何者だい?」
ライ「……ただの人ですよ。この世界では。」
ハッキリと士郎の目を見ながらそう答えるライの瞳に揺らぎはなかった。シグナムもそれに気付き何も言おうとはしなかった。
士郎「そうか。………お風呂が空いたら呼ぶよ。それまでは好きにしていていいよ。」
ライ「はい。」
短い遣り取りを終え、士郎とシグナムも道場から出て行く。ひとり残されたライはポツリと呟く。
ライ「………今はそう思っていたい………そう願いたい……」
その呟きは夜に闇に溶けるように消えていった。
士郎は家のリビングの椅子に座りライのことを考えていた。
思い出されるのは美由紀が御神流の技『徹』を使ったあとに見せた2つの歩法。初めに見せた『花瓣』は純粋に驚いた。流れる水や舞い散る花びらのように掴みどころのない緩やかな動き。自然体でいて隙のないその動きは武術をしているものにとっては眼福と言って良いものであった。
二つ目の歩法の『花王』は見ていて悲しくなった。自然に動くという意味では『花瓣』と変わりないが、その動きは人間が動く際に見せる際の不自然さを全て失くし、さらに自分を偽るように気配を消すことで自らの動きを認識させないというものであった。それを使えば自らが近づいたことに違和感を覚えない、もしくは認識できないのだ。それはまるで――――――――――――
士郎「暗殺者」
士郎は静かに呟く。
ライが使う歩法は決してスポーツとしての武術のものではなかった。相手の命を効率良く奪うために研磨され続けた技術。士郎にはそう映った。
そのことに気づいたとき、士郎はライの正体が気になったが、それ以上にその技術を見た目十代の若者が身につけなければならない状況にあったことが悲しかった。
士郎はライと後でもう一度話すことを心に決めた。
シグナムは現在、お風呂に入り終わり着替えていた。
しかし服を着替える動作をしていても頭に浮かぶのはライの先ほどの試合であった。ライが初めて見せた技術を思い出し少し興奮している。それを自覚しながらも自分のすぐ身近にあれほどの使い手がいるのかと思うと嬉しくなっていた。
再びライと手合わせできることを考えながらシグナムは脱衣所から出て行った。
ライは試合の後、軽くクールダウンしてから高町家に戻った。タイミングが良かったのか士郎にお風呂が空いていることを伝えられ、そのまま入浴していた。
体を洗い、湯船に浸かる。お湯の温度が少し高かったがライ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ