第60話
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わ。」
茶髪の女子生徒は湾内絹保といい、少し麻生に怯えながらも自己紹介をする。
もう一人の黒髪の生徒は泡浮万彬と言う名前だ。
麻生と美琴の噂を聞いて気になったのだろうな、と麻生は考える。
「お二人が校舎内を歩いている姿を見ると、噂は本当なのですね。」
泡浮は麻生と美琴の顔を見比べながら言う。
美琴は少し顔を赤くしながらも否定する。
「ち、違うわよ!!
こいつにそんな特訓何て必要ないわよ!!
だって、この私が手も足も・・うぐぅ!?」
美琴は言葉を続けようとしたが麻生が後ろから美琴の口を両手で塞ぐ。
その行動を見て三人は首を傾げる。
「どうかされましたか?」
婚后は心配の表情を浮かべながら聞いてくる。
麻生は美琴の口を塞ぎつつ後ろに下がりながら答える。
「ああ、こいつが特訓の内容を言おうとするから俺が止めただけだから気にするな。
それじゃあ俺達はこれから特訓があるから、そろそろ行かせてもらう。」
「が、頑張ってください。
わたくし達はお、応援しておりますわ。」
少し脅えながらも湾内は言う。
麻生は美琴を連れて人気のない中庭まで移動する。
両手を美琴の口から離すと、美琴はものすごい勢いで振り返り麻生に言う。
「何でいきなり後ろから私の口を押えたのよ!!」
「お前が余計な事を言いそうだったからだよ。」
「余計な事?」
「お前、さっき自分が手も足も出なかったとか何とか言うつもりだっただろう。」
「そうだけど。」
美琴が正直に答えると麻生は疲れたような溜息を吐く。
「それが困るんだよ。
お前の言う事を他の奴が信じれば、嫌でも俺に注目が集まる事になる。
そうなると色々と面倒なんだよ。」
「どうしてよ?
その・・大きな声で言えないけどあんたはあの一方通行にも勝ったのよ。
どうしてそれを自慢とかしないのよ。」
美琴は不思議で仕方なかった。
自分に勝ったことやあの一方通行に勝ったのに、その事が学園都市内に全く広まっていないのだ。
美琴の問いかけに麻生は視線を逸らし、空を見上げた。
その表情はとても暗く、遠い目をしていた。
「俺の能力は自慢できる能力じゃない。
できる事なら目覚めてほしくなかった。」
そう語る麻生の表情を見た美琴はその訳を聞くに聞けなかった。
二人の間に沈黙が流れる。
そして、チャイムが構内に響き渡る。
「もうすぐ、授業が始まるな。
そろそろ戻ろないとな。」
麻生は自分の教室に向かった歩き出す。
美琴もその後に着いて行く。
麻生の言った言葉の意味もその表情の意味を美琴は考えるが分かる訳がなかった。
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