投刃と少女
とあるβテスター、解禁する
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刀《タルワール》を高々と掲げ、目の前の敵───C隊のリーダーである騎士へと向けて、何らかのソードスキルを発動させようとしているところだった。
対するは、右手に長剣、左手にカイトシールドを構えた青髪の騎士。
咆哮するコボルド王の剣幕には鬼気迫るものがあり、並大抵のプレイヤーであれば、そのプレッシャーに気圧されてしまうことだろう。
───でも、これなら。
これならいけるはず、と。僕は心の中で呟いた。
ボスの使用するスキルについては、会議の場で事前に対策済みだ。見たところ、使用武器も湾刀から変更されている様子はない。
相手がディアベル───恐らくは、キリトに対する妨害工作を指示した元βテスター───なら、ボスが使う曲刀スキルの対処法は頭に入っているはずだ。
実際、彼は敵の咆哮に怯んだ様子を微塵も見せず、落ち着いた動作で初撃を捌こうとしている。あの様子なら、多少の攻撃で崩される心配はないだろう。
裏でキリトに対する妨害工作を仕組んでいたのは……まあ、ちょっと見る目が変わらなかったわけじゃないけれど、それを言うなら僕だって元オレンジなわけだし。
リーダーである彼がLAボーナスを獲得し、戦力を大幅に増強することができたなら。その時はきっと、彼に付き従うプレイヤー達の士気も大いに向上するはずだ。
もしかしたら、ディアベルの狙いはそこにあったのかもしれない。妨害工作を行ったのは少しやり過ぎな気もするけど、それだけ彼も本気だったということだろう。
まあ、この際。誰も死なずにボスを倒すことができるなら、LAがどうとか、そんな小さなことに拘るつもりもない。
「あ……ああ………!」
と、僕が悠長にそんなことを考えていると。
僕の近くで彼らの戦いを見ていたキリトが、引き攣ったような声を出した。
声を出したいのに出せないといったような……まるで何かを恐れているかのような、そんな表情で。
「キリト……?」
「──ッ!!だめだ、下がれ!!全力で後ろに飛べぇぇぇぇッ!!」
怪訝に思った僕が名前を呼ぶと、それが引き金となったかのように、彼は突然大声で叫び、ディアベル達に制止を求めた。
その視線の先には。血のような真紅のライトエフェクトを纏い、今まさにソードスキルを放とうとしている、ボスの湾刀……。
───っ!?まさか、使用スキルが違う!?
血の気が引いたような顔で叫ぶキリトの絶叫を聞いて、ハッとした僕は、亜人の王が持つ湾刀へと目を向けた。
アルゴの情報では、ボスが後半戦で使用するのは曲刀カテゴリの『タルワール』だったはず。
現に。コボルド王が右手に持った武器には、曲刀の特徴ともいえる緩く反った刃が煌いている。
刀身はプレイヤーが使うものより少し細いように見えるけど、βテストでは曲刀以外にあんな武器はなかったはず───
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