投刃と少女
とあるβテスター、解禁する
[1/4]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
女の子にここまでボコボコ殴られたのは、生まれて初めてかもしれない。
現実世界で母親に引っ叩かれたことがないわけじゃないけど、それは正拳突きじゃなくて平手打ちだったし、今さっきのような連続攻撃というわけでもない。
ようやく泣き止んだシェイリに頼み、マウントポジションを解除してもらうと、彼女は頬を少し紅潮させながら『ご、ごめんね、痛かったよね?』と謝ってきた。
痛かったというか、これがゲーム内じゃなかったら顔の形が変わっているところだったよ……。
───まあ、自業自得なんだけどさ。
SAOには痛み自体はないけれど、彼女の拳は確かに痛かった───心が。
泣かせてしまったこともそうだけど、僕は一人でパニック状態に陥って、もう少しで死ぬところだった。
あの時、シェイリとキリトが助けてくれなければ。僕は今頃真っ二つにされて、この子を置き去りにするところだったんだから。
「キリトも、さっきはありがとう。助かったよ」
「……、いや、俺は別に……」
───ん?
助けてもらったお礼を言うと、キリトの様子がおかしいことに気付いた。
何だかはっきりしないというか、余所余所しいというか───って、ああ、そうか。
「黙ってて、ごめん」
「………」
キリトの態度がおかしい理由は、僕が《投刃》と呼ばれる《仲間殺し》だからだろう。
さっきのキバオウの態度から察するに、アルゴの言っていた『アニールブレード+6』の持ち主は……十中八九、キリトで間違いない。
彼が件の元βテスターだとしたら。《投刃》が昔何をしたのか、知らないわけではないだろうから。キリトが僕を信用できなくなるのは当たり前だ。
だけど、それでも───
「キリトが僕を信用できなくなったなら、それは仕方ないよ。でも、ごめん。せめて次の層に着くまでは、このままパーティメンバーでいさせてくれないかな?」
それでも今は、無事に第2層に到達することが最優先だ。
キリトが僕を……《投刃のユノ》を信用できないと判断したなら、それはそれで構わない。
でも、せめて今だけは。このボス戦が無事に終わるのを、この目で見届けるまでは。
それまでは、このパーティの一員でいさせてほしい。
「……違う。違うんだ、ユノ。俺は───」
そう思い、僕が問いかけると。
キリトは何かを言おうとして、ポツリポツリと言葉を漏らし始めた。
「グルルラアアアアアアアアアアッ!!」
……だけど、次の瞬間。
コボルド王が突如として上げた、今までとは比べ物にならない声量の雄叫びに、キリトの声は掻き消されてしまった。
何事かと思い、ディアベルらC隊に包囲されているはずの、亜人の王へと目を向ける。
「ウグルゥオオオオオオオオ───!!」
一際猛々しい雄叫びを上げたコボルド王は、手にした湾
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ