第2話「マスターの特質はサーヴァントに影響する」
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去や未来といった言葉とは無縁の場ですしね。しかし、幾ら補正が無くとも、英霊ならばそれ相応の力があって当然の筈。もし明久の足を引っ張るだけの存在であったとしたら」
そこまで言ってアーチャーを睨み付けるアルト。
その目には明確な死の気配と殺意が渦巻いていた。
「なに、心配あるまい」
しかしアーチャーはそれを自信の笑みを浮かべて真正面から受け止めた。
「私は君が召喚したサーヴァントだろう?それが最強でないはずがない」
「口先だけでなど、どんな人間にでさえ言えること。論より証拠で示しなさい」
いいだろう――そう言ってアーチャーは両手に何かを投影した。
握られているのは白と黒の対となる双剣。
僕はその美しさに思わず見惚れてしまう。
けど、アルトの表情はさらに険しさを増した。
「それは、中華剣? 」
「そうだ。白と黒を対となす陰陽剣、干将莫耶。嘗て中国に住む夫婦、干将と莫耶が共に鍛え上げた双剣だ」
アーチャーは気心の知れた戦友を懐かしむように刃渡りを撫で、目を細めた。
「……成る程、確かに名剣。ですがそれは宝具の域には届いていない、まさかそれだけであんな事を抜け抜けと……!」
「待ってアルトっ!!」
殺気を発し、今にも彼に向かって手をかけようとしているアルトを慌てて手で制す。
アルトの殺気を止めようとしたからではない。
魔術師である僕には分かった。彼が、アーチャーが呟きにも似た呪文の詠唱を始めているのに気づいたからだ。そして僕の魔術回路から膨大な魔力の流れがアーチャーに注がれているのを感じた。
「――So as I pray, unlimited blade works.」
言霊と同時に世界が切り替わる。 明久やアルトルージュ、守護騎士達が立っていたのは、先ほどまでの城ではない。 ひび割れた大地に赤い空。中天には巨大な歯車。 そして何より異質なのは、地に突き刺さった数え切れないほどの剣、剣、剣――
「アーチャーが固有結界だなんて!?」
その悲鳴は明久から発せられたものであった。
魔術師である彼は、魔法に最も近い奇跡、それも大禁呪とされる固有結界の価値も理解していた。だからこそ混乱していたのだ。 双剣を担っているから回りに剣が刺さっているのは解る。だが剣使いに固有結界を具現化させるのは、どう考えても有り得ない事なのだ。それも剣の心得があるとはいえ、弓兵の英霊たる彼がこんな技を使 うのか。生前は魔術師だったとでも言うのだろうか? そして何より、この荒れ果てた世界が彼の心象風景だとでもいうのか……。
「下らない心配をしたことをお詫びするわ。成る程、確かに素晴らしい切り札ですこと」
それを見たアルトは満足そうに唇を吊り上げる。
彼女は死徒であり魔術師で
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