第5章 契約
第59話 実験農場にて
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を終え、別の実験農場で試験的に栽培されているのですから、このジャガイモとトウモロコシ。そして、このガリアには存在していなかったトマトなどが一般人の間に広まって行けば、少しはこの世界の一般人の生活も変わって来るでしょう。
その為に、貴重な夏休みの一カ月を、仕事に忙殺されたのですから、その程度の……、まぁ、確かに長いスパンには成りますが、その程度の成果が有ってくれなければ、浮かばれませんからね。
主に、俺の精神衛生上の話なのですが。
後は、ジャガイモの見た目や保存方法に因っては毒を持つ事が有る特徴から、悪魔の実として庶民から敬遠され、南米から伝わって来てから百年以上、食用として用いられる事がなかった、……と言う地球世界の歴史を繰り返させない事が重要と成って来ますか。
その辺りについては、イザベラ……ガリア諜報部の持つ情報操作の能力が重要と成って来ますかね。
もっとも……。
其処まで考えてから、俺は、俺の左右に存在する少女たちを強く意識する。
そう。和漢だろうが、ガリア共通語だろうが、書物さえあれば満足している蒼と紫の少女と、自らを律し、修行と任務に励む女性騎士と共同の地味な任務でしたが、何も奪う必要のない任務と言うのは、心の平安をもたらせる物だと言う事を改めて感じさせてくれましたよ。
少なくとも、物を作ると言う行為は、人を前向きにしてくれると言う事だけは確かですから。
「それで、シノブ。このジャガイモの収穫が終わった後の、この実験農場はどうなるのです?」
自分たちの夏の成果を見つめていた、しばらくの沈黙の後、アリアがそう問い掛けて来た。
そして、この言葉の中には、夏の終わりに相応しい、ほんの少しの寂しげな雰囲気が存在しているように感じられる。
そう。まるで、夏の祭りの後に吹く風の中に、何故か秋の物悲しい雰囲気を感じるような。そんな、微妙な雰囲気が。
もっとも、俺は別に農業の勉強をしていた訳でもないですし、歴史上の知識として三圃式農業などの知識を持って居るだけで、そう詳しい訳でもないのですが。
「俺が、このままここガリアの実験農場の管理人に成る訳ではないから、精霊と共に畑仕事に精出す人間は居なくなるけど、ガリア王家の実験用の荘園として機能するはずやと思うで」
そう、当たり障りのない返事をして置く俺。
但し、おそらくは、冬のマジャールでは、流石に作物を植えたトコロで育つとも思えませんから、土作りの期間として、たい肥を入れ、土の上下を入れ替えて十分な消毒を為し、来年春の作付けまでの間、土地を休ませる事に成るとは思いますが。
まして、ジャガイモに限らず、作物と言う物は、大抵、連作を嫌う物ですから。
その辺りから、地球世界の歴史では三圃式農業や、これから先
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