第5章 契約
第59話 実験農場にて
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観を押し付けて、それで勝手に正邪を判断しては問題が有りますから。
「違うよ」
しかし、何故かあっさりとその俺の言葉を否定して仕舞うイザベラ。そして、
「市場に出回っている水の秘薬を買い占めているのはウチ。ガリア王国さ」
……と、良く判らないのですが、おそらくはかなり大きなレベルの情報の暴露を行う。
しかし、その行為の理由は判らないのですが。
訝しげな表情でイザベラを見つめる俺。普段と変わりない雰囲気のタバサ。そして、我関せずの雰囲気で、革製の表紙の本に目を通し続ける湖の乙女。
そんな三者三様の表情を見せる俺達を順番に見つめた後、
「あんたの世界の言葉に、必要は発明の母と言う言葉はないのかい?」
……と、そう問い掛けて来る。
必要は…………。
成るほど。そう言う事ですか。俺は、その言葉を聞いた瞬間に、以前にタバサに聞いたこの国……いや、この世界の歴史について思い出す。そして、確かにその話を聞いた時に、違和感を覚えたのは事実でした。
そう。それは、六千年の間、殆んど変わる事のなかった文明のレベルについて。
いくら魔法が有ると言っても、これは矢張り異常。そして、その状況を……。イザベラは万能の秘薬、水の秘薬と言う、どのような難病や怪我でも立ちドコロに治癒させて仕舞う魔法薬の流通量を減らす事で、医学と言う、人が……貴族が生きて行く上で必要な技術の発展を促そうとして居るのですから。
ただ……。
「あまりにも急激な変化は、普通の人からは理解されないと思いますよ、イザベラ姫」
☆★☆★☆
取り入れ間近と成った少し黄色に変わった葉と茎の間を、優しい風に乗って、少女の歌声と、俺の笛の音が流れて行く。
その歌声が触れた植物たちが、同じように微かな音色を奏で、その音色が隣の植物に触れる事に因り、更なる共鳴を起こす。
そう。これは、長嘯に属する仙術。元々、植物に音楽を聞かせる事に因り発育が良くなると言う説が有り、それを呪的に利用して大量の植物の生育を一気に進める魔法。
至極ゆっくりとした笛の音に透明なタバサの歌声が重なり、遠い山脈から吹き下ろし、湖を越えた夏の終わりの風に乗って、この実験農場の隅々にまで広がって行く。
八月 、第四週、イングの曜日。
「相変わらず、シノブと、そしてタバサの魔法は植物との相性が良いようですね」
少なくない余韻と共に術の行使を終了させた俺とタバサに対して、この地の支配者の娘が声を掛けて来た。
彼女の血筋を示す、鮮やかな中にも深みを示す長い蒼の髪の毛を素直に風に靡かせ、農場の中に有っての尚、その服装はリュティス魔法学院の制服で有る白のブラウスと濃紺
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