第5章 契約
第59話 実験農場にて
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そして、トリステインと湖の精霊が交わしていた盟約は、湖の精霊を庇護する事。
しかし、この部分に関しては、闇の市場に流れる水の秘薬の例から見ても、トリステイン側に護られているとは思えません。つまり、イザベラが言うように、トリステインとラグドリアン湖の精霊との間に交わされた盟約と言う物は、既に有名無実と成っていると言っても過言では有りませんか。
尚、この部分が、トリステインとラグドリアン湖の精霊との間に交わされた盟約に、何の法的な強制力も、根拠もないと言う言葉の理由でも有ります。
もし、何らかの法的な約束事が有るのなら、湖の精霊に対する密猟が行われた時点で、トリステイン王国が対処しているはずですから。
まして、湖の乙女が言うには、王家の命運は尽きていると言って居ます。これは、おそらくはトリステインにも当て嵌まる言葉だと思いますから。
「イザベラ姫はそう言っているけど、どうする、彼女の言うように、ガリアとの間に新しい盟約を結ぶか?」
先ほどは俺が間に入る必要もなく、イザベラの言葉に了承を示した湖の乙女が、今度はイザベラの言葉の後に、真っ直ぐに俺の顔を見つめたまま反応を示さなかったので、そう水を向けるかのように問い掛ける俺。
俺の問い掛けに対して、微かに首肯く湖の乙女。そして、
「以後、トリステインとの交渉は行わず、あなたを通じて、ガリアとの交渉のみを行う」
淡々とそう告げて来た。この瞬間、トリステインが神霊的な意味に於いて完全に水の加護を失ったと言う事に成ります。
もっとも、人が暮らす上で、その事実がどの程度の不都合を生じさせるのか判らないのですが。
但し、日照りに伴う水不足はガリアも、そしてトリステインにも関係なく訪れていて、更に、麦に蔓延している疫病も、ガリアにだけ流行している訳ではないでしょうから、この神霊の加護を失ったと言う事態は意外に大きな物と成る可能性が有るのですが。
更に、同時にもうひとつの問題が浮上して来ました。
それは、以後、俺が……。いや、このまま進むと、俺の家系が湖の乙女と、ガリアの間の橋渡しを行う神官の役割を担わされた事に成るのですが、俺には貴族の暮らしを望んではいないタバサの使い魔としての仕事が……。
もっとも、俺が神官の役割を担う事と、タバサが貴族に戻ると言うのは、イコールで繋ぐ必要はない、別箇の問題ですか。
再び、満足そうに首肯くイザベラ。そして、
「それなら、その盟約の最初の証として、彼方此方の商人や貴族どもが連れ去ったあんたの仲間をガリアの手で助け出してやるよ。そうすれば、トリステインも、この盟約に対して口出しして来る事は出来なくなるからね」
……と、事も無げにそう言う台詞を口にする。
確かに、イザベラの
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