第5章 契約
第59話 実験農場にて
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くれる事も判りましたが、これについては、そう重要な事では有りませんか。
まして彼女の言葉を借りるのなら、この異常気象や主食となる麦類に蔓延する疫病の原因は、支配者層に問題が有る為に起きている事態。この状態を無理矢理、魔法でねじ伏せたとしても、別の形でしっぺ返しを食う可能性は高いですか。
しかし、それでも、
「ならば、灌漑農業は可能か。このハルケギニア世界の農法は未だ輪作体系が確立されたレベルで、大規模な灌漑事業は為されてはいない。……と言う事は、古代の日本で行われた程度の灌漑工事程度ならば、生態系や世界自体に与える影響は少ないと思うけど」
王家の命運が尽きていたとしても、それは王家や貴族達には関係が有るけど、庶民にはまったく関係のない事。そんなクダラナイ事で、餓死者が出る可能性を見過ごす事は出来る訳は有りません。
もしかすると、俺やタバサ。そして、この湖の乙女の能力を使えば、少しでも失う物が少なくなるのなら、試して見る価値は有ると思いますから。
尚、現在のハルケギニアの農業は、天候。つまり、自然の降雨のみに頼った農業。乾燥農業と呼ばれる種類の物だと思います。そして確か、ヨーロッパで本格的な灌漑農業が実地されるのは18世紀以後。ノーフォーク農法が確立されて以後の事だったと思います。
但し、稲作が主流だった東洋では、当然のように行われていた事ですから、このハルケギニア世界でも、エルフの国の向こう側に地球世界と同じように東洋が存在していたのならば行われているはずです。ならば、西洋に属する地方で行ったとしても、大きな問題は無いと思うのですが……。
少し考える雰囲気の湖の乙女。そして、ゆっくりと首肯く。
これは、肯定。ならば、来年以降はガリアではノーフォーク農業を始める事で、少なくとも日照りなどに対する対策は立て易くなるでしょう。
もっとも、俺の知識ではこれが限界。実際、農業とは天気。つまり、天の気分次第で豊作にも成れば、不作や凶作にも成る物。天候によっては、そんな小細工程度ではどうしようもなくなる可能性も有りますから。
更に問題は、今年の冬をどうやって乗り越えるか、と言う事ですか。
それならば、
「国庫を開く事は可能なのですか?」
今度はイザベラの方に向き直り、そう問い掛けて見る俺。ただ、その時の俺の顔は、かなり難しい顔をして居た事は想像に難くないのですが。
何故ならば……。
中世ヨーロッパで果たして飢饉が起きて、その為に国家が国庫を開いた事が有ったか、……と言われると判りませんから。それに、十九世紀にアイルランドで起きたジャガイモ飢饉の時にも、政府からの出動は殆んどなく、有っても効果的では無かった為に、八十万から百万人の死者や移民を生み出したはずです。
……そう
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