第5章 契約
第59話 実験農場にて
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麦を枯らす厄介な疫病に因り、不作続きの現状。更に、アルビオンは最近まで内乱状態で、現在もトリステインとの戦争状態。ガリアも内乱寸前まで行ったトコロ。トリステインは、前王が死去した後、皇太后が親政を行って居る、……とされて居ますが、実際は、皇太后自身はずっと喪に服した状態で、国政はマザリーニ枢機卿に丸投げ。マザリーニ枢機卿は貴族や、更に言うと住民たちからも人気はないロマリア出身の人物。ゲルマニアもつい最近まで継承に関するゴタゴタ続きで、現在の皇帝の兄弟たちは、すべて獄死、もしくは暗殺死と言う非常にキナ臭い状態。ロマリアにしたトコロで、現在の教皇は二十歳をいくらか超えた程度の青年で、とてもでは有りませんが、配下をちゃんと御せて居るとは思えない状態。
成るほどね。これは、湖の乙女の言葉では有りませんが、全ての王家の命運が尽きていて、新たなる徳を持つ者を天帝が王に定める時期が来ている可能性も有る、……と言う事なのかも知れませんね。
「だから、せめて小麦は無理でも、それ以外の作物が収穫出来たなら、飢饉だけは回避出来るんだよ」
意外に民を思う良き王家の一員の顔を見せながら、俺に対してそう告げるイザベラ。まして、飢饉。つまり、国民を飢えさせる王に王たる資格なし、……と俺も思いますから、その為に必要な措置は真面な為政者としてなら講じるべきですか。
それならば、
「湖の乙女。ガリアに雨を降らせる事は可能か?」
先ずは、一番簡単そうな解決法から消して行く為に、そう問い掛けてみる俺。
尚、俺の知識内でなら、これは可能です。但し、俺には、その雨を降らした事に因り起きる事態を予測する事は出来ません。
これは、つまりバタフライ効果やカオス理論と言うヤツの事。雨を降らせるだけならば、それなりの雨雲にドライアイスでも使って雨の核を作って、それを成長させてやれば雨は降るはずです。しかし、その細かな事象に対する介入が積み重なった結果起きる事態が、この国や世界に対して悪影響を及ぼさないかどうかが、俺には判らないと言う事。
流石に、水不足を解消するには、まとまった雨を降らせる必要が有ると思いますから、その為に降らせる水が後に及ぼす影響や、本来、凶作と成るべきトコロを、不作ぐらいで押し止めた時の未来に対する影響が、俺には判りませんからね。
その問いに対して、
「局地的な天候の改変は、長い目で見るとこの世界の生態系に影響を及ぼす可能性が有り、推奨出来ない」
……と読んでいた書物から視線を上げた湖の乙女が答えた。その瞳に宿るのは理知的な光。そして、事実のみを伝えて来る淡々とした口調。
成るほど。これは、つまるトコロ、バタフライ効果についての言及と言う事と成るのでしょう。更に、俺の問い掛けに彼女はちゃんと答えて
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