第5章 契約
第59話 実験農場にて
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「それで、今日は何の任務の為に俺達は呼び出されたのです」
一応、イザベラの前に居る一同を代表して、そう問い掛ける俺。
確かに、身分的に言うと俺はタバサの使い魔。つまり、このガリアの騎士の従者に過ぎない存在なのですが、タバサがこんな質問を行う訳は有りません。
まして、昨夜、魔法学院のタバサの部屋にやって来たイザベラの使いの伝書フクロウは、本日、プチ・トロワにラグドリアン湖の精霊を連れて出頭するように、……と言う命令だけを記した羊皮紙が付けられていただけで、今までのように、ある程度の任務の内容までが記されていた訳では無かったのですから。
「最近、日照りが続いて居て、このままでは、今年は凶作から、飢饉に発展する可能性が濃厚と成って来た」
イザベラが少し深刻な表情で、そう話し始める。それに、この言葉は俺やタバサも懸念していた内容なのですが……。
それでも、一度や二度の不作ぐらいで、飢饉にまで至る可能性は……微妙ですか。
「確か、ガリアは三圃式農業を行っていたのですよね?」
取り敢えず、タバサに以前に聞いた事が有る内容を、おさらいの意味もかねてイザベラに問い掛けて見る俺。
もっとも、まさか、中世ヨーロッパの農業のやり方を問う事に成るとは思って居なかったのですがね。流石に農業のやり方は俺の知識の守備範囲外で、アガレスや、ダンダリオンを起動させなければ、細かい事までは……。直ぐに理解出来るかどうかは、微妙ですか。
尚、三圃式農業と言うのは、耕地を秋蒔き、春蒔き、それと休閑地を放牧地として分け、これを一年毎にローテーションを組んで使う耕法です。
ただ、タバサに聞いた限りでは、この耕法を導入している割に、ガリア全体の人口が千五百万人程度しか存在しないようなので、農業が未熟で収穫量自体が多くなく、多くの人口を養うだけの農作物が収穫出来ない状況なのだとは思いますが。
ちなみに、地球世界のフランスの例で言うなら、十二、三世紀には既に二千万人ほどの人口が存在していたはずですし、清教徒革命の頃なら、日本でも既に千五百万人以上の人口を抱えて居たはずですから、このハルケギニア世界の人口の少なさの異常さが判ろうと言うものです。
この世界のガリアと言う国は、西はスペインやポルトガル。東はハンガリーやルーマニアなどの、俺が考えるヨーロッパの大半の部分を支配する国ですから。どう考えても、人口で言うなら最低でもその三倍は居てもおかしくはないと思うのですけどね。
イザベラが俺の問いに首肯く。そして、
「麦を枯らす厄介な疫病が流行っていて、ここ数年来、ずっと不作続きさ。其処に、秋蒔きの小麦の収穫を決める時期に妙な天候が続いて、その次は春蒔きの小麦の生育期に一滴の雨も降らない」
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