第二十三話 犬と猫その十一
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「防空壕にするか古墳にするか」
「どっちかね」
「どっちにするかよね」
「そう、どっちにするのかな」
猫又も送り犬も二人に顔を向けて尋ねる。
「もうすぐ防空壕に来るけれど」
「どうするの?」
「じゃあ近いし」
「そうよね」
二人は今回は近い場所を選ぼうと思った、それでだった。
二人で顔を見合わせて話してそれで決めた。
「じゃあ防空壕ね」
「そっちにしようね」
「じゃあそこだね」
送り犬は二人の話を聞いてそのうえで応じた。
「防空壕に行くんだね、今回は」
「ええ、それじゃあね」
「案内お願いね」
「すぐそこだよ」
そう言ったらまさにだった。
一行の目の前に少し盛り上がった祠の様な場所がありその入り口は下に続いていた、まさにそれがだった。
「ここが防空壕だよ」
「ここに戦争中は、よね」
「そうだよ、皆逃げ込んでたんだよ」
そうしていたというのだ。
「空襲があるとね」
「つまりシェルターよね」
聖花は防空壕について現代的な言葉で表現した。
「これって」
「まあそうしたものだね」
「爆撃から身を避けるから」
「そうだよ。あの時は防空壕は学園のあちこちにあったけれど」
「残ってるのはここだけなのね」
「そうなんだ、多分残ったのあね」
「幽霊の関係ね」
聖花は送り犬に対して言った。
「やっぱり」
「公には発表されてないけれどね」
「そうなのね」
「そうだよ、それでだけれど」
送り犬は周囲を見回した、するとだった。
一行の周りに色々な動物達が来ていた、象にキリンに熊にオランウータン、虎やライオンや狼もいる。
ペンギンもいればアシカもいる、だが普通ではなかった。
皆身体が透けている、愛実はそれを見て言った。
「ああ、幽霊さん達ね」
「そうだよ」
動物達の中のアザラシ、ゴマフアザラシが言ってきた。
「僕達はそうだよ」
「そうよね。人間の言葉喋るし」
「普通の動物は人間の言葉喋らないでしょ」
「それに身体も透けてないし」
「それを見ればわかるね」
「そうね。それであんた達って」
「皆この動物園にいたんだよ」
アザラシは右の前足を動かしながら愛実達に話す。
「それで死んでね」
「幽霊になったのね」
「そうなんだ。何か僕達の姿を夜に見て」
「怪談話の一つになってるみたいだね」
「そうよ」
その通りだと返す愛実だった。
「謎の動物の一団が徘徊してるってね」
「それ考えてみれば大変なことだけれどね」
噂にしてもそうだというのだ。
「檻から出てるとかって話になるから」
「うん、けれどチェックしたら檻は大丈夫だから」
「普通に怪談になったのね」
「いや、生きているうちは皆を楽しませて」
そしてだと言うアザラシだった。
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