投刃と少女
とあるβテスター、殴られる
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たくないという免罪符を振りかざして、一人で置き去りにしようとしていた。
何をしてでも守るだなんて言いながら、それがずっと続くはずはないと、心のどこかで勝手に諦めてたんだ。
───なんだ……。僕、最低じゃないか……。
────────────
「ユノくんのばか!一人で死んじゃうなんて、絶対にゆるさないからっ!!」
……そう言って、シェイリはとうとう泣き出した。
彼女の涙が頬に落ちてくるのを感じながら、知らず知らずのうちに彼女の信頼を裏切っていた自分を恥じる。
───さっきだって、そうだ。
自分が元オレンジだとバレたからといって、一人で思考停止を起こして。
シェイリが助けにきてくれなければ、僕はあのままモンスターに殺されて、彼女を一人ぼっちにしてしまうところだった。
『それにユノくん、守ってくれるんでしょ?』
あの“はじまりの日”、彼女は僕にこう言った。
SAO初心者であるシェイリには、あのまま『はじまりの街』に残るという選択肢だってあった。実際、僕も彼女はそうするとばかり思っていた。
それでもこの子は、僕を信じて一緒に行くと言ってくれたんだ。守ると言った僕の言葉を、一瞬たりとも疑うことをせずに。
僕はそんな彼女との出会いに感謝して、必ず守ると心に決めた───はずだったのに。
守ってもらっていたのは、どっちの方だったのやら。
───ああ、僕ってほんと……どうしようもないなぁ。
βテストの時に僕がやってきたことを彼女が知れば、どういう反応をするのかわからない。
もしかしたら。味方殺しの経歴がある僕のことを、信用できないと言うかもしれない。
だけど、その時はその時だ。
彼女が僕と一緒にいることを拒むなら、望み通りに消えればいい。
でも。もしも彼女が、それでもいいと───信じると、言ってくれたなら。
その時は、《投刃》だとか元オレンジだとか、そんなものは関係なくて。
僕はただ、あの日心に決めたことを守ればいい。たったそれだけの、話だったんだ───
───独り立ちだとか何だとか、とんだエゴだったね。
どうして今まで気が付かなかったんだと、自分でも不思議に思いながら。
未だ泣きじゃくるシェイリの涙を拭ってやり、頬にそっと手を当てる。
「ごめん、シェイリ。本当にごめん」
「うっ、うぇっ、ユノくん……」
───あーあ、こんなに泣いちゃって……。
そうさせたのは他でもない僕だろう、と、自分自身に苦笑いしつつ。
僕を殴るうちに乱れた黒髪を、手櫛でそっと整えてやった。
さらさらとした髪が指の間を通り抜ける感触を感じながら、改めて彼女の目を見つめる。
赤く、泣き腫らした目。僕が臆病だったばっかりに、こんなになるまで泣いてしまった彼女。
そのことに罪悪感を
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