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とあるβテスター、奮闘する
投刃と少女
とあるβテスター、殴られる
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うな音と共に砕け散った。

「……、ユノくん……」
亜人モンスターを難なく葬ったシェイリは、急いで走り寄ってきたためか、肩で息をしながら僕の名前を呼ぶ。
少し遅れて合流したアスナの話によれば、自分と戦っていたコボルドを無理な戦い方で倒し、かなり強引にこちらの援護に回ったのだそうだ。
その証拠に。いつもほぼ一撃必殺で敵を倒してきたため、ほとんど8割を切ることのなかったシェイリのHPが、注意域のイエローゾーンまで減少していた。

「ユノくん」
「……、う、うん」
少し落ち着いたのか、彼女は今度はしっかりとした声で、再度僕の名前を呼ぶ。
だけど。その声はいつもの間延びしたものではなく、むしろ剣呑な響きを含んでいるような───

「ばかっ!!」
「ぐえっ!?」
と、思った次の瞬間。
シェイリの右手が残像を残す程の速さで振るわれ、次いで、僕の顔面を強烈な衝撃が襲った。

これはドラマなんかでよくある、女の子が激怒した時に繰り出される平手打ち───なんて生易しいものではなく、ゲームに出てくる格闘家が使うような、見事な正拳突きだった。
レベルアップボーナスのほとんどを筋力値につぎ込んでいるシェイリから繰り出された拳たるや、下手なソードスキルより威力があるのではないかと思ってしまう程だ。
パーティメンバー同士では攻撃判定にならず、HP自体は減らないものの……攻撃がヒットした時の衝撃そのものは緩和されない。
そのため、僕は頭から仰け反るようにして吹っ飛び、無様に尻餅をついてしまう。

「ばか!ばかばかばか!なに考えてるの!?死んじゃうところだったんだよ!?」
「しぇ、シェイリ、ちょっと待っ───」
尻餅をつき、上半身だけを起こした状態の僕に、再び彼女の正拳突きがクリーンヒット。顔面と後頭部に強烈な衝撃を感じ、仰向けに倒れ込む。
更にシェイリは僕の上に馬乗りになり、左右の拳で容赦なく顔面に連続攻撃を浴びせてきた。
拳がヒットする度に衝撃が生まれ、更に殴られた衝撃と後頭部を床にぶつける衝撃が、二重苦となって何度も僕を襲い───し、死ぬ!本当に死ぬって!

「ばか!ユノくんのばか!」
「ま、待って、これ以上は本当にHP減りそ───うぶっ!?」
僕のことを罵りながら両の拳を振るうシェイリに、本格的に命の危険(HPが減らないとわかってはいるものの)を感じ、制止を求めた瞬間。
彼女はおもむろに回復ポーションを取り出すと、蓋を開けて強引に僕の口へと捻じ込んだ。

「げほっ!ごぼっ!おぇっ………ジェ、ジェイリざん、ボージョンなら自分で飲めまずがらっ……!」
「しらないっ!」
口の中に柑橘系の甘い香りが広がり、危険域にあった僕のHPゲージが回復していく───のはいいんだけど、倒れた状態で無理矢理液体突っ込まれたため、まともに
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