投刃と少女
とあるβテスター、殴られる
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デスゲームと化した今のSAOで、βテスト時代とはいえ“仲間を殺した”という前科があれば───討たれる理由としては、十分すぎる。
───でも、それでも……!
それでも、せめて。
せめて、あの子が───シェイリが独り立ちできる時が、来るまでは。
僕が《投刃》だとバレることで、彼女まで巻き込んで、周りのプレイヤーからの敵意を集めることだけは。
そんな事態になることだけは、絶対に、絶対に避けなきゃいけないはずだったのに……!
「──!────ッ!」
「……、あ」
そうして、僕が気付いた頃には。斧槍の刃が、もう目と鼻の先まで迫っていた。
もう一体のセンチネルを相手取っていたキリトが何かを叫ぶが、何を言っているのかわからない。
思わず間の抜けた声を出してしまう僕。当然ながら、AIに基づいて動いているだけの敵がそんなことを配慮してくれるはずもなく。
周囲をディアベル率いるC隊に包囲され、咆哮する亜人の王。
その側近であるモンスターが繰り出した、斧槍による攻撃。直撃すれば瞬く間にHPを全損させるであろう、容赦ない一撃。
───避けられ、ない。
僕はそれを、ただぼんやりと眺め───
────────────
「ユノくん!ダメだよっ!」
刹那。
この一ヵ月、何度も僕を救ってくれた彼女。そのよく通るソプラノボイスが、僕の耳を打った。
切羽詰ったシェイリの声で我に返り、思考の海に沈みかけていた意識が表層へと浮上する。
「──ッ!!」
咄嗟に身体を捻り、右腕を前に出して左半身を庇う。
流石に無傷とはいかず、斧槍の刃が右腕に食い込み、HPゲージが決して無視できない勢いで減少していく。
ただでさえ軽装備なのに加え、先の戦闘で少なからず減っていたHPゲージ。その二つの要素が合わさり、僕のHPはレッドゾーン《危険域》まで落ち込んでしまった。
それでも、急所のある左半身に直撃を……クリティカルヒットを貰い、即死することだけは、何とか回避することができた。
本当に、ギリギリのところだったけれど。
「ユノ、退いてろっ!」
「……ごめん、任せた」
次の瞬間。いつの間にかフリーになっていたキリトが、僕を狙っていたセンチネルへと向けてソードスキルを放つ。
片手剣 突進技《ソニックリープ》
キリトの剣がライトエフェクトを纏い、鮮やかな直線軌跡を描きながらセンチネルの金属鎧を打ち付けた。
「よしっ!シェイリ!」
「────ッ!!」
キリトの声に応えたシェイリは、いつもの気の抜けるような声とは違う、言葉にならない咆哮と共に敵へと肉薄する。
《バスターチャージ》を発動させながら突っ込んできた彼女の攻撃により、センチネルは胴を金属鎧ごと横一閃に切り裂かれ、ガラスの割れるよ
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