第二十五話 少年期G
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世界。最初は家族とその周辺という小さな範囲だった世界は、いつの間にかたくさんの人と関わりを持つようになった。そしてこれからもその縁はどんどん広がっていく。
世界が広がる楽しみや不安もあるが、やはり嬉しい気持ちが強い。俺が確かにこの世界に在ることを実感させてくれる。一緒にこれからもずっと歩いて行ける存在がいる。そして、そんな人がもっと増えていくかもしれない。それっていいことだよな。
「そういえば、こっちの道って行ったことがなかったな。コーラルこっち行ってみようぜ」
『はいはい。ますたーの気まぐれには慣れていますよ』
こんな風に何気なく選んだ道。単純に新しい道を歩きたくなっただけの理由で。なんてことのない選択で選んだもの。それでもそれは、無数にある選択肢から間違いなく選び取られたもの。
「ここって道は狭いけど、人ごみがすごいな」
『本当ですね。あっ、ますたー右に避けないと当たりますよ』
コーラルの注意に慌てて身体を捻って右にずれた。子どもの身体って不便だよなー、と何気なく思っていた俺の目に映ったのは、俺と同じぐらいの背丈の子どもが大人にぶつかってしまっているところだった。
最初は大丈夫かな? とそれだけの心配だった。明るい茶色の髪をした子どもで、たぶん年も同じぐらいだろう。少なくとも今まで会ったこともない人物で、普通ならもう意識から外しているだろう些細なこと。
「―――あっ」
それでもその時の俺には、その子どもから視線を外すことができなかった。たまたま見てしまった出来事を目のあたりにしてしまったからだ。だけど俺には実際関係ないことなのだから、そのまま見て見ぬふりもできた。
それでも俺は無意識のうちに、俺の身体はその子どもを追いかけていた。後ろからコーラルが慌ててついてくる声が聞こえる。どうしてわざわざ……と思う自分もいたが、特に理由はない気がする。でもそのまま去らないといけない理由もない。なら、まぁいっか。と俺は決めていた予定をあっさり変更した。探索は後日にでもできると思ったからだ。
「コーラル。今大人の人にぶつかった子追える?」
『え、出来るとは思いますが…』
とりあえずやってみます、とサーチを始めたコーラルと並行して走る。たまたま出会った子どもを追いかけるために。
偶然選んだ日に、偶然選んだ道で、偶然見てしまった子ども、そしてふいに動いてしまった俺自身の意思が生み出した1つのきっかけ。
この出会いが本来あるべき運命だったのか、それとも俺が変えてしまったものなのかはわからない。それでも、これだけはいえる。
俺は何度やり直したって……この選択肢を選ぶと思う。俺が知らない事実を告げられた後でも、それでもこの出会いを選ぶだろう。テスタロッサ家に生まれ
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