第二十五話 少年期G
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ともう1回だけ。アルヴィンは「アレ」が表に出てきたのはまだ1度だけだと思っているが、彼が認識するずっと以前に1度起こっていたのだ。その1つが、とんでもない歪みを持たせてしまったイレギュラー。
「アレ」は彼が転生する直前に1度暴走していたのだ。
アルヴィンが選んだ転生に、「アレ」は納得ができなかったのだろう。アルヴィンは「転移」があれば、危ないことから逃げられると思っていたが、トラウマはそうは思わなかった。理不尽な大きな力による唐突な死を知っていたがゆえに…足りないと感じてしまった。だからアルヴィンの意識が眠った、死神が集中していた転生の直前に力を使った。
『いつでもどんな時でも好きな場所、世界に転移できるレアスキル』
与えられた力を使い、「アレ」はもらった本人が考えも付かないようなことをしでかした。今この瞬間だからこそできたこと。いつでもどんな時でも、ということは「転生する直前」でも問題はない。望んだ場所に転移できる、ということは「転生に関する情報を受け持つ場所」でも問題はなかった。
改ざんしたのだ、「アレ」は。ただその改ざんはあまりにも杜撰だった。死にたくない、というそれだけのために動いた本能だったのだから細かいことなどできるわけがなかった。
「アレ」はただ知りたかったのだ。自身に死をもたらすだろう現象がいつ、どのように起きるのかを。それがわかれば、唐突に死ぬことはない。わかっていれば逃げられる。そのために、これから先の運命すら見られる場所に行き、その情報を加えようとしたのだ。
現に、アルヴィンは断片ながらその恩恵を受けていた。ヒュードラの事故が確実に起きること。いつごろ事故が起きるのかを感じ取っていたこと。記憶がないためなんとなくでしか本人は感じ取れなかったが、奥底にはそれを見た記録が確かに存在していた。
「暴走のおかげで、あいつは自身の死に関する運命に敏感になった。これはあいつにとって確かにメリットになるものだ。だけど、無理やりな介入を行えば…必ず綻びは生じる」
死神はようやくその無理な介入によって、生じた問題をまとめあげた。その問題は、アルヴィンにとってはかなりきついものであった。もし彼が得たものの代わりに得たデメリットを知れば、ふざけるな、と叫んでもおかしくないようなもの。
彼がテスタロッサ家に生まれた最大の要因。死に関する項目に特に介入が強かった余波で、他の情報にもそれが影響してしまったのだ。黒のインクが他の色に飛び散り、もともとのインクの色を変えてしまったようなもの。それは運命の1つ……めぐり合わせという縁をつなぐ情報を歪ませてしまった。
絆を育み共に歩むものを手繰り寄せるはずだった縁は、己と同じ死の因果を持つものを呼び寄せる悪縁へと塗り潰された。
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