9 「エリザの思惑」
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時は少しさかのぼって、前日の夕刻。男たちと共に渓流から帰ってきたエリザとリーゼロッテはそのまま村長の家に行って、先日伝えていなかったナルガクルガと青年の関係性について伝えた。
「……なるほど。“竜の背中に乗る青年”。そんなことが…」
穏やかな表情のままお茶を啜る村長は、まだ若い竜人だ。“若い”といってもそれは竜人の中ではという意味であって、実際は百年以上生きているらしい。華やかな着物を着て、これまた派手な化粧をしているが、なんとなくその風貌がユクモ村と合っているのが村人たちの長年の不思議だった。
「それで、彼の名は?」
「ナギ、と」
「ナギ…ですか……」
村長が首をひねるが、その名に聞き覚えはない。
それでも村長は一度頷くと、家政アイルーに紙と筆を持ってくるよう言った。家政アイルーとは、つまり家政婦のようなものだ。家の掃除をしたり料理をしたりする。村長は職に迷ったアイルーたちを自分の家政アイルーとして雇い、1匹でも食っていけるように育てているのだった。もちろん、雇われているあいだは給金も出る。
「あっ」
その行動に思わず期待の声が出るが、村長は苦笑してリーゼロッテをたしなめた。
「あなたがたお2人のことは信頼していますが、わたくしも村長ですから、立場からもそう簡単に彼を信じることはできないのです。ただ、2人の招来有望なハンターを助けていただいたのもまた事実。とりあえずユクモ村への招待状と、感謝状として筆を取らせていただくことにしますわ」
「はい…」
「しっかりその子にお届けしていただくのですよ」
「任せてください。なんとしてでもあいつを引っ張ってきますから!」
どんと胸を張ったエリザに、リーゼロッテはなんとなく不安を覚えた。
翌日、リーゼロッテはエリザとともに再び渓流のエリア9へとやってきていた。リーゼはジャギィ装備だが、エリザは髪も下ろして普段着である。モンスター素材で作られた頑丈な鎧は、「つけているだけで体に負担をかける」と医者に没収されてしまったのだ。そこまでされても尚リーゼロッテと共にここまでやってくるあたり、すっかりハンター根性がしみついたというか何というか。
ちなみに護身用と没収されなかった弓は肩に担いでいる。いくらなんでも鍛錬まではするまいと医者も思ったのだろう。実際には鍛錬を通り越して渓流にまで足を踏み入れているが。それも装備なしで。
こんなことなら装備も返してもらったほうが良かったんじゃないかと思うリーゼロッテであった。
それにしても、
「ハナ、いないね……」
辺りを見回したリーゼロッテがつぶやく。ハンと鼻を鳴らしたエリザがポーチからマタタビを出すと、しゃがんでブンブンと左右に振り始めた。まるで猫じゃらしを振っているようだ。家でよくチェ
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