9 「エリザの思惑」
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、タイミングを逃した。どうしようと思っているあいだに時間が過ぎる。
ええい、ままよ。
「あの、ペイントボールの件。すみませんでした。あの、あれ作ったのエリザなんです。あの子の独断だから、村長がやったんじゃないんです! どうか気を悪くなさらないで下さいっ」
「あー、うん。わかってる。ダイジョウブダイジョウブ」
小言をネチネチ言われるか、それとも一発ガツンと怒鳴られるか――。
そう(どちらにしろ怒られる)覚悟を決めていたリーゼロッテにとって、この反応は意外だった。きょとんと見上げると、いつの間にたどり着いた青年の家がある。思っていたよりもしっかりした木の小屋だ。「どうぞ」と促されて中に入ると、僅かに残るペイントボールのにおい…。再び罪悪感がむくむくと首をもたげてきたが、何度も謝るのはよくないと、とりあえず先日の礼を改めて述べることとした。
「先日はありがとうございました。わたしはユクモ村の専属ハンターで、リーゼロッテ・マインといいます」
『いい? お願いをするときは、相手の目を見て、はっきり誠意が伝わるように言うの』
母(一応言っておくが死んでない。今日も元気に父とイチャイチャしている)の言葉を思い出し、青年の蒼い瞳をしっかり見つめた。一瞬怯まれたような気がするが、気のせいだろう。
「ナギさんを迎えにきました」
心のどこかで、「そういえばここで断られたらわたし絶対村に帰れない!?」「なんとかして帰路だけでも確保しなければ!」などと思いつつ、リーゼなりに必死に見つめた。青年は顔を背けて窓を見上げている。こちらの顔すら見てくれない。やはり最初の印象が悪かったかと思うが、こちらとてもう引くに引けないのだ。
ある意味、決死の覚悟だった。
彼女はそれが、青年の半対人恐怖症によるものだとは思いもつかない。
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