第一章 グレンダン編
道化師は手の中で踊る
和解と怒りとetc……
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緊急警報が鳴った。
汚染獣が襲来したことを知らせるものだが、グレンダンの人々にとってはちょっとしたお出かけの合図みたいなものだ。
事実、孤児院の子供たちはこの状況を楽しんでいるように元気だ。
そんな中、レイフォンは準備をしていた。
手にはシキが使っていた錬金鋼を握って。
「レイフォン……」
「……」
ズキリとレイフォンの胸が痛む。
シキとの戦い以降、レイフォンはリーリンとまともに話をしていない。
話したいのに話せない、そんな微妙な距離感がレイフォンはもどかしく感じていたが、それを壊すようなことは出来ない、いやすることはしなかった。
ここ一ヶ月、リンテンスに稽古をつけてもらったのも強くなりたいのと同時に、リーリンと距離を置きたいからだった。
「ごめん、行くね」
そんな言葉しか出ない自分に腹が立つレイフォン。
振り切るように扉を開けて、外に出ようとしたとき、リーリンが腕にしがみついてきた。
「リー――――」
「ゴメン、なさい」
レイフォンは言おうとした言葉を飲み込んだ。
しがみついてきたリーリンの顔に驚いていたからだ。
「全然、全然あなたたちのこと理解してなかった」
「リーリン」
あのリーリンが泣いていたからだ。レイフォンが覚えている限り泣いている姿は数える程度だからだ。
「目をそらしてた、ずっとそらしてたの!!」
「……」
レイフォンは黙り込んだ。
急がないといけない、そのはずだ。帰ってきてからでもリーリンの言葉を聞くのは遅くないとレイフォンは知っている。
だが、レイフォンは黙っていた。
「あの戦いでわかったの、シキとレイフォンがいた場所がどんなに危険なのか! 私、私ッ!!」
「……」
「心のどこかで、二人は無敵で傷つきもしないと思ってた。同じ人間なのに、血を流す人なのに」
「……リーリン」
レイフォンはリーリンの肩に触れようとして、止めた。
血で汚れた手でリーリンに触れるのは嫌だったからだ。
だが、レイフォンは抱きしめたかった。目の前で自責の念に押しつぶされそうなリーリンを抱きしめて、秘めた想いを告白できたらどんなにいいか。
「あの戦い、私ずっとレイフォンを応援してたの。シキなんかまけちゃえ、って」
「そうなんだ」
「……ねえ、レイフォン」
先ほどとは打って変わって、静かな声だった。
「無事に帰ってきて。怪我したら承知しないから」
俯いて、リーリンはそう言うとレイフォンに正面から抱きついた。
甘い香りがレイフォンの鼻腔を擽る。
レイフォンは、驚きながらも抱きついてきたリーリンを引き剥がそうとしなかった。
「じゃあ、リーリン。怪我せずに戻ってきたら話をしよう」
「うん」
レイフォンはそう言って、リーリンを身体からそっと離す
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