第一章 グレンダン編
道化師は手の中で踊る
和解と怒りとetc……
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とはっきり言うんですね」
「まぁ剣から手を離せよ。別に戦おうなんて思っちゃない」
そんな言葉を聞いてもクラリーベルは剣から手を離すことは出来なかった。
まるで猛獣を前にした草食動物が如く一切気を抜かなかった。
メアリーはため息をつきながら、何もない空中に座る。
普通は床にしりもちをつくはずだが、そこに椅子があるような体勢で座った。
「……どんな手品ですか、それ」
「ただ空気に座っただけだよ、そこまで凄いことじゃない」
クラリーベルは非常識の塊である目の前の人物に軽い目眩を覚える。
シキという非常識の塊を知っているがここまでではない。
「さて本題だ、クラリーベル」
「……」
「そこに寝てる馬鹿が誘拐されるから、黙って見ていてくれないか?」
瞬間、クラリーベルはここが病院だということを忘れて、体を剄で強化した。
そしてそのまま砲弾のようにメアリーに突っ込む。
愚直とも言える突進だが、狭い病室では避ける場所は限定されている。
そんなクラリーベルの様子を見て、メアリーは何も言わず指を弾いた。
「なっ!?」
突進していたクラリーベルの体が突然止まった。
手で止められたわけではない、武器でもない、ましてはけいではもない。
止められたときに衝撃はなかった。まるで映像を止めたようにクラリーベルの体は空中で静止していた。
何をされたかわからないせいか、クラリーベルは呆然としていた。
「クラリーベルさんや、こいつは仕方ないことなんだよ」
「何を言っているんですか」
あくまでも声だけは冷静にクラリーベルはメアリーの言葉に疑問をぶつけた。
「天災とでも思ってくれ。物語で言うなら序盤で魔王が出てくるもんだ」
「なんで……」
「まぁそうだな。お前が感じてる理不尽は正当だ。だけどこいつを誘拐させろ」
ふつふつと怒りがこみ上げてくる。
仕方ない? 理不尽? 誘拐させろ?
「ふざけないで」
「まぁよく言われるよ。俺は仕事熱心じゃないし、今回だってただの趣味でやってることだしな」
「趣味? 趣味で、大切な人を誘拐させれるのを見ていろと……」
「うん」
軽い調子で言い放つメアリーにクラリーベルは殺気をぶつけるが、それを無視してメアリーはクラリーベルの頭を掴み、耳元で話しかける。
「安心しろ、この寝坊助を起こすためにすることだ」
「誰が信じろと?」
「……あー、もうメンドくさい。ちょっと寝てろ」
次の瞬間、クラリーベルは気絶していた。
メアリーは頭を掻きながら、シキが寝るベッドにクラリーベルを横たえる。
そっと頭を撫でて、メアリーはシキに被っていた仮面を被せる。
「いつまで寝てるつもりだろうな、コイツは……はぁ、メンドくさい」
そう言ってメアリーは姿を消した。
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