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くらいくらい電子の森に・・・
第十七章
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――加速していく。

下りの山道ということを加味しても、ありえない速度でぐんぐん加速している。顔を上げると風圧で息がつまりそうになる。
もっとも、顔を上げていても、下げていても同じことだ。冬だというのに霧が立ちこめ始め、3メートル以上の視界が利かない。時折、バックミラーに車のヘッドライトがチカチカ反射する。すると、それに反応するようにランドナーが加速する。

<i526|11255>

おい、一体何があったんだ。
元来、根性の悪いお前が順調に走る時は、ロクなことが起こらないんだ。

また、バックミラーにヘッドライトが映った。これで4回目だ。さっきから道の脇に避けたりして、追い越しを促しているんだが、俺とほぼ同じ速度でついてくる。うっとうしいな。路側帯が広めのカーブに出たら、いったん停止してやり過ごしてやるか…と思ってブレーキレバーを握ると、すかっ、すかっ、という嫌な感触。

――畜生、ワイヤーが切れてやがる!!

じょ、冗談はよせ、ランドナーよ!
屠るのは自転車だけにしといてくれ!!
脇の下を冷や汗が伝う感覚が、冷えた体に嫌な寒気を加味した。そのとき、胸ポケットにさしておいた携帯が、ぶるぶる震えだした。無我夢中で引っ張り出し、耳に当てる。
「…何だ!」
『よかった!…まだ掴まってなかった!』
着信はまたしても『姶良』。こっちも走っているが、あっちも走っているらしく、息が上がっている。…どんなハードなアルバイトに手を出したのだ。いやそれより、なんでこんなタイミングで連絡をよこすのだ。
「今度は何だ、姶良よ」
内心パニックで怒鳴りつけてしまいそうだが、何とか押さえ込む。あいつはヘタレだから、目上があまり強く出ると、しどろもどろになって話が分かりづらくなるからな。…俺が妥協するんだ、姶良よ。用件はすぱっと済ませろよ。
『後ろ、変な車がついてきてませんか!?』
バックミラーに、さっきの車が映りこむ。もう5回目だ。
「…てめぇ、追っ手がいるなんて聞いてないぞ!」
『僕もさっき気がついたんです!』
「で、掴まったら俺はどうなる」
『殺されはしないと思うけど…』
「しかし、アルテグラはパァになるわけだな、姶良よ」
姶良は答えなかった。奴は答えにくい質問になると、言葉を濁したり黙り込んだりする。人生で交わす会話の半分は答えにくい問いで出来ているというのに、大丈夫かこいつは。
『この先に、車両は入り込めない道があります。これからナビゲートするから、僕の指示に従って走ってください!』
「要らん」
『…は?』
なにが『は?』だ。相変わらずすっとぼけた返事をしおって。
「どうせ、未舗装の藪みたいな道だろう。無理だ」…なにしろ止まれないし。
『なんで!山道のためのランドナーじゃないんですか!?』
姶良の裏声に反応
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