第十七章
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も、同じ事を呻く
『殺してくれ、じゃなくて、オムライス、でしょ』
もう一度、同じ場所を噛み千切らせる。ぶしゅって水が弾ける音がして、絵の具がさっきよりも勢いよく飛び出した。あらぁ、動脈が通ってたみたい。
…失敗、失敗。これじゃ思ってたより、すぐに死んじゃうかもね。
――音に細工をすると、少しだけ、狂った相手を操れることを知った。
細かいことは出来ないけど、簡単な動作の繰り返しだったら命令できる。だから命令するわ。永遠に書き続けなさい、オムライスって。
――ここはご主人様の墓標。
そしてこれは、神聖な殯の儀式。邪魔をする奴は、絶対に許さないんだから。
さっき、いいもの見つけたの。…この建物内のイントラネット。なんでだか分からないけど、ここはいろんな機器が、たった一つの制御装置で統括されるの。
――もう、ご主人様がいない小さいパソコンなんて要らない。
私、ここに引っ越すんだから。そして、この大きな、立派な回線を、全部ご主人さまへの花束で埋め尽くすの。
――ううん、これだけじゃ足りない。
ご主人さまがいない世界を全部、花束で埋め尽くそう。ご主人様を捨てた家族も、数回見舞いに来ただけで、あっという間にご主人さまを忘れた友達も、ご主人様を知ろうともしなかった世界中の皆も、全員でご主人さまが大好きだった『オムライス』を繰り返すの。
素敵!世界中がご主人さまのために『せはしく、せはしく明滅』するんだから!
ご主人さまの、その名前は…
杉野…?
姶良…?
……あれ?
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――俺は、泣きながら書き殴っていた。
肩の肉をえぐった血を指につけて、何度も、何度も書き殴る。『オムライス オムライス オムライス』…腕が、指が止まらない。指の先から骨が見えても、止まらない。
いつ誰が入ってきてもおかしくないのに。
――この病室に入ってきた、4人の看護士のように。
二人は引き裂いて殺して、部屋の外に逃げ出した二人は、追いかけて捻り合わせてやった。隔離病棟の出入り口まで、奴らは逃げ延びた。…危なく、逃がすところだった。腕と足を捻ったら、ごり、ぼき、ごき、と、嫌な音がした。何も、考えられなかった。ただ手が動くままに、二人を捻り合わせ…出来上がったのは、血溜りでのたうち回る気味の悪い生き物。…ひどい吐き気がこみ上げてきて、気がつくと流迦の病室に逃げ帰っていた。自分が何のためにここにいるのか、もうそんなことは分からない。
この部屋には、俺が殺した3人の死体が転がっているのに。
――畜生、なんでこんなことになったんだ…
白石、白石、白石…おぉ、なんでこんな…俺が、白石を…
課長に嫌味言われたり売り上げがノルマに到達しなかったりしたら一緒にヤケ酒を飲みに行った。俺
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