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くらいくらい電子の森に・・・
第十七章
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々がここに来たのは…」
松尾が申し訳なさそうな声色を作って眉をひそめる。でもその後ろでは、後藤が携帯に口をつけて「参考人身柄確保!身柄確保です!」とか嬉しげに叫んでいた。
「見当はついてるから、前置きはいい。…ところであんたら、拳銃持ってるか」
「は?…誤解をしないでいただきたいのですが、危害を加えるために携行しているのではなく、あくまで万が一の場合に備えて」
「任意同行なら、コトが済めばいくらでも応じるよ。その前にちょっと付き合え」
僕は誰にも気取られず、ドアのロックを解除できた。ピッという小さい電子音を確認して、紺野さんは踵を返して近づいてきた。刑事二人が慌てて後を追う。
「何処に行くんですか、まだ話は済んでないでしょう」
「任意で頼んでいるうちに協力したほうが、後々有利だぞ!…て、あ!?」
紺野さんの目前で隔離病棟のドアが開いた。二人はふっと目を細めると、少し腰を落として懐に手を入れた。警棒のようなものが、ちらっと垣間見えた。
「止まれ、不法侵入の現行犯で逮捕する!」
「何でもいいから入って来い!事情はあとで話す、あんたらの協力が必要なんだ!」
柚木と流迦ちゃんが入ってきたのを確認して、隔離病棟の廊下と入り口を隔てるドアのロックを解除した。その瞬間、血生臭い異臭がむわっと立ち込めた。


からり…と警棒を取り落とす音が、後ろから聞こえた。


1階の廊下は、血をぬりたくったように紅かった。
廊下の中央に広がる血溜りで、4本の手と、4つの目を持つ新種の生き物が蠢いていた。
なんだ、これ…
僕は、よせばいいのに、まじまじと見つめてしまった―――


「ぅう……うわぁああぁ!!」


目が、合った。
2つの口から血泡をほとばしらせながら、そいつは日本語で『タスケテ…』と呟いた。

それは、新種の生き物なんかじゃなかった。

原型が分からないほどに、無惨に折られ、ぐちゃぐちゃに砕かれ、捻り合わされた二人の人間だった。血に染まった白衣には、ネームプレートのようなものがピンで留めてある。それはお互いに、ほんのわずかに残った正気を駆使して、これ以上皮膚が破けないよう、骨が折れないよう、じりじりと僕らに向かって這い寄ってきた。
「タ…タスケ……」
「タス…ケ……」

―――来るな。

迷わず、そんな言葉が頭に浮かんだ。…これが得体の知れない化け物だったら、こんな気持ちにはならなかったかもしれない。『それ』が元は人間だった名残を残していることが、一層強く嫌悪感をあおる。…そんな事もあるんだ。
「助け、ないと…」
熱に浮かされたように、柚木がつぶやいた。
「無駄よ。もう助からない」
冷徹な声が、柚木の後ろから聞こえた。
「…流迦さん」
「出血が多すぎる。もう、気力で喋ってるだけ。…よしん
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