第十七章
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するように、ランドナーが更に加速した。…おぅ、分かった分かった。そういきり立つな。
礼儀知らずの後輩には、俺がびしっと言ってやるから。
「お前、気が小さいフリはしているが、自分以外の奴をどこかで侮ってるな、姶良よ」
『違っ…いま、そんなコト言ってる場合じゃ』
「こいつは、『振り切れる』と言っている」
『なに言ってんすか!』
「俺はお前よりも、こいつと付き合いが長い。振り切る自信があるというなら、絶対に振り切る」
俺自身、不思議なくらいに気持ちが落ち着いてきた。そうだ、こいつは伝えたかったんだ。ワイヤーを切って減速できないようにして、『俺は奴らを振り切れる』と。…じゃあ振り切って見せろ。俺はお前にアルテグラの運命を託す。
「俺たちを舐めんな。見てろ、このまま振り切ってやる!」
姶良の答えは待たず、携帯を折って再び胸にさし、ギアを最大に切り替えた。
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―― 一方的に電話を切られた。
何度かリダイヤルしてみたけど、応答しない。…まさか、追跡車に追突でもされたのか?と、もやもや考えながら走っていると、紺野さんの肩が顎にヒットした。
「ぼうっとするな、左だ!」
「…ごめん」
鬼塚先輩のことを聞かれるかと思ったけど、何も聞かれなかった。理由を聞けば、俺にどうにか出来る問題じゃねぇだろと言われるんだろうな。僕なら、自分の手に負えない問題でもうじうじ気にし続けるだろうに。
「……遅かったか」
受付に駆けつけた僕らの目に入ったのは、呆然と隔離病棟の入り口を見つめる受付のジジイと、八幡に呼ばれた刑事らしき2人のダルそうな伸びだった。…一人、伸びの拍子に振り返った。
「…あっ!」
短く叫んだ刑事を、もう一人は怪訝そうに見つめた。しかし自分たちが何のために寒い病院で張っているのかを一瞬で思い出し、俊敏な動作で振り返った。
「紺野匠さん、ですね」
紺野さんは彼らをイラつきを含んだ視線で一瞥して、かろうじて僕に聞こえる声で呟いた。
「すぐ行くから、携帯でロック解除しろ」
「…うん」
後ずさりして紺野さんから離れた僕には大して関心を払わず、二人の刑事は名刺のようなものを取り出した。
「○○署、捜査一課の松尾です」
「同じく、後藤です。不躾ですみませんが、今朝のニュースはご覧になったでしょう」
紺野さんは軽く頷き、名刺をしげしげと見つめた。
「お、パーポ君だ。…警察手帳とか見せないんだな」
「あんなことするのはドラマだけです。普通、捜査で使うのは名刺です」
名刺に印刷されたパーポ君について突っ込まれ、二人は少し拍子抜けしたようだった。が、この質問はよくされるらしく、松尾と名乗った背の高い男がフレンドリーな口調ですらすら答えた。
「ところで紺野さん、大変申し上げにくいのですが、我
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