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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜絶望と悲哀の小夜曲〜
異端者の最後
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落ちる音がする。その場の空気が凍っていた。

誰も息をすることさえもできない、そんな空気。当のレンさえも、一瞬だが殺意など頭から消し飛んだ。ただただ目の前の光景に息を呑む。

起こったことはごく単純なことだ。

レンの放ったソードスキル、その攻撃範囲にいたヒースクリフの前にエクレアが躍り出た。ただそれだけ。

咄嗟の防衛反応だろうか。突き出された右手がそれを示している。

だが、レンのワイヤーは素手で防げるほど甘いものではない。レンの放った凶刃は、突き出されたエクレアの右腕の肩口までをざくろのように引き裂いていた。

鮮血がぼとぼとと迸る。止まる気配は一向にない。

「……なん………で」

レンの口が動き、掠れた声が凍えた空間を引き裂く。

その漆黒の両目は限界まで見開かれ、信じられないものでも見るかのような光が宿っている。

凄まじい痛みに苛まれているはずのエクレアの表情は、やはり虚ろだった。だがそのダークバイオレットの瞳は、大きな決意と覚悟を表しているかのようにらんらんと輝いていた。

周囲のアリどもがカチャカチャと乾いた音を出す。それをどこか愛しげに見た後、エクレアの唇が開いて絹を引き裂いたような声が漏れ出でる。

「………仕方がないのよ。ここでゲームが終わったら、エンケイには会えないッ!永遠にッ!絶対にッ!」

ヒステリックにエクレアは叫ぶ。アリ達が錯乱した主に恐れをなすかのようにエクレアを中心に綺麗な輪っかができる。

「だからっ!私はここであなた達にこのゲームのクリアはさせないッ!!絶対に、ぜッた───」

不意に、彼女の声が途切れる。

信じられないように見開かれた彼女の視線が、ゆっくりとレンから離れて己の体、もっと詳しく言えば腹部へと映っていく。

そうしてその瞳が写した物は、自分の腹部から飛び出る───

大剣の刃。

「………あ…………」

音もなくエクレアの体が揺れる。

「エクレアねーちゃんッ!!」

レンが叫ぶ前で、エクレアはどさっと言う音とともに黒曜石の地面に倒れる。

そしてその後ろからは、無機質な笑いを浮かべるヒースクリフ、茅場が現れる。

茅場は倒れたエクレアの体から見たこともない大剣を引き抜いた。先ほどのボス戦で携えていた長剣とは違う。深い青に彩られた、とんでもない情報圧を纏う巨剣。

いや、レンはその大剣に見覚えがある。

もうずいぶん前のことのように感じられるが、カーディナルと真っ向から戦った時に、レンがBBシステムの力を借りてジェネレートした巨剣だ。確か名前が、《強化外装(エンハンストアーマメント) ジ・インパルス》。

レンが神と戦うためにジェネレートした巨剣と、まさかこんな形で再開するとは、なんとも皮肉めい
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