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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜絶望と悲哀の小夜曲〜
異端者の最後
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そうな表情を浮かべる。
だけど───
「何で笑っているの?レン」
逃げるわけがない───
そうエクレアに言われて、レンは初めて自分の口角が持ち上がって笑みの表情を作っていることに気付いた。
何でだろう、そう思ってレンは考え、あまりにも簡単かつ単純な結論にたどり着いた。
そして、レンは今度こそ己の意思で笑みを浮かべた。
「何でって?嬉しいからだよ、エクレアねーちゃん」
「嬉しい?」
首を傾けるエクレアの眼前で、レンは穏やかに笑った。その笑みは黒い過剰光がないように見えるほどに無邪気で、透明な笑みだった。
「僕はね、このゲームが始まった時に心のどこかで望んでたんだよ。このゲームを、いつか自分の手でクリアするってことを」
「それは……勇者願望ってこと?」
「………そうかもしれない。だから嬉しいんだ、僕がこのゲームをクリアできるかもしれないと言うこの状況が」
エクレアが無言で、切れ長の双眸をすっと細める。
その眼には、ひどく痛々しい光が宿っている。そう、例えるならば限界まで張り詰めたゴムのような。
「……あなたの望みは分かったわぁ、レン。だけどね、その望みは叶わない。この場でこのゲームがクリアされたら───」
そこでエクレアは言葉を切り、目を伏せる。前髪に隠されたその奥からは何の感情も見えない。
「彼に、エンケイに会えないんだからぁッ!!」
「なっ………!」
レンは息を詰まらせた。彼女の夫であり、初代第五席に名を連ねたエンケイはもはやこの世にはいない。
その犯人は今現在、永久の眠りについてしまっている。
この局面で、なぜ彼の名が!?とレンは見た。
エクレアの背後、そこに悠然と立っている紅衣の聖騎士の口元が歪み、引き裂くような笑みが浮かんでいることを。
レンは全てを理解した。なぜエクレアがこうまでしてヒースクリフに付き従うのか。その理由を、全て。
エクレアがどれだけエンケイを愛していたのかを。
「きっ……さまああぁぁあーッ!!!」
レンが鮮血のごとき叫び声を上げ、神速のごとき速さで両腕を振るった。
そこから飛び出したワイヤーは、すでに白とライトエフェクトが掛かっていた。過剰光ではない、眩いばかりのソードスキルの発動光である。
───
聖譚曲
(
オラトリオ
)
傲慢
(
プライド
)
───
二つの輝線は、惹かれあうかのように複雑な軌道を描いてエクレアを避けて背後の茅場に迫る。
その二つの凶刃には、レンの持つありったけの殺意が込められている。
恐らくそれに僅かでも触れたなら、HPは跡形もなく消し飛ぶだろうその一撃は、轟音とともに遮られた。
ぼたり、ぼたり………と液体の滴り
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