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とあるβテスター、奮闘する
投刃と少女
とあるβテスター、参戦する
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をした。それは何故だ?

キバオウの言う『卑怯もん』とは、俺のような元ベータテスターに対する言い方だ。
仮に、ユノが元ベータテスターだったとしても。キバオウの態度は、それだけの人間に対するものとしてはあまりにも……。

───それに、あの場はディアベルの仲裁によって収まったはずだ。

元ベータテスターだろうと貴重な戦力で、諍いを起こして全滅したらそれこそ意味がない───今となっては『あんたが言うか』と突っ込みたくなるが、ディアベル自身がそう言っていた。
だからこそ。ベータ当時からマークされていた俺はともかく、単なる元ベータテスターだというだけでは、彼を警戒する理由にはならないはずだ。

「あんたもや。得意の投げナイフを使わんっちゅうことは、最後まで正体隠してコソコソしとるつもりやったんやろ?せやけど残念やったな、あんたの正体はとっくにバレとるんやで!」
「──ッ!!」
だが。次の瞬間には、キバオウの矛先がユノに向けられていた。

───“得意の投げナイフ”、だと……?

ユノが息を呑む気配が伝わってきたが、俺はそれどころではなかった。
『投げナイフ』。その単語を聞いた瞬間、不意に感じた既視感《デジャヴ》にハッとなった俺は、自身の頭に残るベータ時代の記憶を漁り、情報を照らし合わせていく。

昨日出会ったばかりの短剣使い、ユノ。
自分のことを『僕』と呼ぶ、少年らしい口調。男にしては高めの中性的な声、小柄な体躯───否、今のSAOでは姿形はアテにならない。それよりも。
近接戦闘がセオリーのSAOで、わざわざ威力が低めの投剣スキルをメインで使っていた人物に、俺は一人しか心当たりがない。
直接の知り合いというわけではないが、何度かボス戦でも顔を合わせるうちに、その個性的なプレイスタイルに興味を持ったこともある。
姿形が違うというのはもちろんのことだが、短剣を使っていたから気が付かなかった。
仮に、“彼”の名前を思い出したとしても……名前が同じというだけの、まったくの別人だと思っていただろう。

───どうして今まで忘れてたんだ。俺は……俺は、彼のことを知っている……!

彼がフードで顔を隠したり、苦手なはずの近接武器で戦っていた理由は。
その理由は恐らく、ベータ時代の彼を知る者に、素性が割れるのを防ぐため───

───ユノ。おまえが、あの《投刃》なのか……?

ベータテスト時代。第9層のボスが攻略された直後に突如として名前が挙がり、一時有名となった一人のプレイヤー。
その後暫く各地で目撃された後、ある日を境に姿を消し、やがて忘れ去られていった一人の男。

ベータテスター、《投刃のユノ》。
仲間を殺し、LAボーナスを持ち逃げした───オレンジ《犯罪者》プレイヤー。
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