参ノ巻
守るべきもの
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あたしは湧き出てくる涙を必死で拭った。
どうして、三浦はあんなにいいこを騙せるの?
由良は、ただ、三浦が好きなだけだったのに…。
金が、何よ。地位が何よ。そんなので自分の行動を正当化するんじゃないわよ。誰かを傷つけてまでそんなものが欲しいの?
あーもう、どうしよう。あたしはどうすればいい?どうしたら一番良いのだろう。純粋に恋してた由良が一番傷つかない方法…。
求婚されたと嬉しそうに言ってた由良の笑顔が曇らない方法…。
あたしはぐしぐしと目を擦った。
わかんない…わかんないよ。
当然佐々家に戻る足どりは重く、あたしはどこをどう彷徨ったのかも定かではないまま、結果的に門をくぐったのは日がとっぷりと暮れ、流した涙もかぴかぴになってからだった。
そしてあたしを真っ先に迎えてくれたのは、こともあろうに由良だった。
「瑠螺蔚さまー!」
由良はあたしが帰ってくるのを待っていたようで、泣きながら飛びついてきた。
「瑠螺蔚さま!三浦さまが、三浦さまが…」
「三浦が、どうしたの」
声が少し震えてしまう。
「三浦さまが、私のようなこどもなど嫌いだともう好きでも何でもないとおっしゃって…私…」
ちっ。みーうーらーめ!
あたしは確かに由良に二度と近づくなと言ったけど、それにしても行動がはやすぎる。前田の権力に恐れをなしてるのは明らかだ。
「ああ、そのこと。知ってたわ」
あたしはなんでもないことのように言った。
「…えっ?」
由良は涙に濡れた睫を震わせてあたしを見た。
「あんたに言うつもりはなかったんだけどね。あんたたち、別れさせたのあたしだから」
「…え?」
あたしはにやりと笑った。由良は頭がついていっていないようだった。
「やっぱ、三浦じゃぁさ、佐々は身分不相応だと思わない?あたしが散々脅しといたから、あいつ、もう二度と由良には近づかないわよ。諦めなさい」
あたしは無情にも話は終わったとばかり由良に背を向けて歩き出した。
「…瑠螺蔚さま、瑠螺蔚さま!今のお話、嘘なのでしょう?嘘…嘘だと…言ってください!」
「本当よ」
あたしは振り返った。きっとその顔は冷たく、残酷に由良の目にはうつっただろう。
由良は顔を歪ませて、耐えきれず自分の部屋のほうへ駆けていってしまった
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