参ノ巻
守るべきもの
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。
あたしは遠ざかる由良の背中を、酷く冷静な気持ちで見ていた。
…あー…あ。
なーにやってるんだ、あたし。
由良の泣き腫らした瞳が、ちくちくと心を刺す。
これで、いい。だって「三浦にフラれた」って事実だけで由良は充分傷ついた。自分が二番目だったとか、三浦があたしも襲おうとしたとか、そんな余計なことは知らなくて良いんだ。友人に裏切られるのと、恋人に裏切られるのでは、意味合いが違う。だから、これで、いい…。
あたしはのろのろと力ない足どりで由良と反対側の角を曲がって、どきりとした。
そこには、高彬が立っていたのである。
けれど今のあたしには何も声をかける気力すらない。とりあえず今は何も考えずに眠りたかった。
あたしは黙ってやり過ごそうとした。
けれど。
「瑠螺蔚さん、あなたは人が良過ぎる」
そう高彬に言われて、あたしは思わず立ち止まった。
高彬は静かな声で続けた。
「由良は、三浦などとつきあっていたのか…。男なら、皆、三浦がどんな奴かは知っている。あいつの罪を、瑠螺蔚さんが被ることはないんだ」
「…」
高彬は、困ったような優しい顔で、あたしの頬に指を伸ばした。あたしは避けも振り払いもしなかった。高彬の指は頬から耳朶を滑り、そっと首の後ろまでまわって、あたしを包み込むように柔らかく抱きしめた。もう限界だった。
あたしは高彬にしがみつきながら、幼子のように泣いた。涙が滝のように溢れる。
「こんなの、ずるい…っばかっ」
「そうだね。僕はずるい」
高彬のバカ。あたしを甘やかさないで。
もうやだ。今日は本当に散々だ。年下の高彬の前で、あたしはこんなにみっともなく泣いている。いつもこんな時あたしは兄上に甘えていた。ひとりで立とうと思ってるのに…。高彬、お願いだからあたしを甘やかさないで。兄上のかわりなんてなくていい。あたしは強くなりたい。涙なんて流したくない。今日だって、あんたに会わなければ、あたしはきっと無様に泣くことなく明日を迎えられたのに。本当に傷ついているのは、あたしなんかじゃなく由良なのに…。
「由良には、由良には本当のことを言わないで…!」
あたしは掠れた声で言った。
「瑠螺蔚さんのお人好しは今に始まったことじゃないけれど…」
高彬はそう言ってから、ふと思い立ったように空を振り仰いだ。
「瑠螺蔚さん、綺麗な七
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