第二幕その四
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身に危機が及ぶからだ。そしてそれを否定することももうできなくなってしまっていたのだ。正義は曖昧なものである。だからこそかつては王が正義であったのに今ではクロムウェルが正義となっているのだ。それが変わるまでは何も言うことができなかったのである。正義は曖昧なものであるが絶対なものであるからだ。
「あの人に逆らったら俺達だって断頭台行きになるんだ。いや」
兵士は言葉を変えた。
「縛り首かもな。俺達は」
「嫌なものだ」
この当時首を切られるのは貴族の特権であった。縛り首は長い間もがき苦しむ。それを考慮してか首を切られるのもまた貴族の特権だったのである。これはローマ帝国の時代からである。ペテロはキリスト教徒として弾圧を受け首を切られているがこれは彼ローマ市民として高い地位にいたからであった。多くのキリスト教徒は餓えた獣達の餌となり惨たらしく殺されているのである。
「なりたいか?」
「馬鹿を言うな」
兵士の一人が声を少し荒わげた。
「御前だってそうはなりたくないだろう」
「勿論だ」
「俺だってそうだ。誰だって死にたくはない」
「そうだな」
彼等はそんな話をしながらその場を立ち去った。アルトゥーロはそれを見届けると静かに出て来た。
「行ったか」
そして再びテラスを見上げた。
「行くか、いや、どうするべきか」
彼は逡巡した。
「会いたい。だが会ってもよいものか。今の私はしがない流浪の者。しかも罪を問われている。そのような者があの方に相応しいのだろうか」
思い続ける。
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