第十二話「パートナー」
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球を浮かべる。
「スカーレットが狂乱したのはあたしのせい。だから、あたしが取り戻す!」
そして、燃え盛る火球をおもむろに左手に押し付けた。
「ああぁあぁぁぁッ!!」
グォオオオオゥゥゥ――――!
苦悶の表情を浮かべるクレアに呼応して、魔獣――いや、スカーレットも苦痛の雄叫びを上げた。黒炎が迸り、荒れ狂う神威が轟風と化す。鎖がギシギシと軋んだ。
「ごめんね、スカーレット……あたしも、我慢、するから――」
顔面を蒼白にして額に脂汗を滲ませながら激痛に耐える。しかし、ついに許容範囲を越えたのか膝をついた。
その瞬間、スカーレットが戒めの鎖を打ち破り、雄叫びを上げながらクレアに飛びかかった。
「チィ!」
まさか、自力で脱出するとは! 予想外の事態に一寸反応が遅れた俺は慌ててクレアとの間に割って入り、その背を盾にした。
「ぐぅ……っ」
「リシャルト!」
焼けるような痛みを感じる。クレアが悲鳴を溢すが、今は付き合っている暇がない。
クレアが頑張って精霊契約を破壊してくれたお陰で、スカーレットと狂精霊との結び付きが弛んだのだ。スカーレットの身体から靄のように黒い炎が立ち上っている。
俺は地を蹴って反転すると同時に白銀に輝く剣を一閃させる。狙い違わず、スカーレットと狂精霊を分断することに成功した。
狂精霊は黒い球体となって虚空に留まる。
「……残滓すら残さん。消え失せろ」
――我が右手に宿るは破滅をもたらす光。今ここに終焉を告げる!
掲げた掌に魔方陣が展開されゆっくりと回転し始める。そして、何かを握り潰すように掌を握り締めた。
「集約せし壊滅の光」
刹那、魔方陣の中心から極太の光線が放たれ、狂精霊を呑み込んだ。空に向かって放ったため地上の被害は皆無だ。
光が消え去った後を青白い残光が煌めいている。狂精霊は文字通り塵すら残さず消滅した。
それを確認した俺は顔面を蒼白にして地面にへたりこんでいるクレアの元に駆け寄った。
額に張り付いた紅髪から汗が滴り落ち、地面をポタポタと濡らしている。
「あ……ぐ、う……」
喉の奥から絞り出すような呻き声が上がる。左手はひどい火傷となっており、白い肌をしているだけに爛れた痕が痛々しく写る。
手の甲に刻まれていた精霊刻印は跡形もなく消えていた。
本当によく……。
「よく、頑張ったな……」
クレアの左手に手を翳す。
「――凍結解放、〈女神の抱擁〉」
淡い緑色の光が左手を包む。三
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