第七章 銀の降臨祭
第三話 銀の降臨祭
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ンたち首脳陣の顔に安堵の表情は浮かんではいなかった。未だアルビオンから脱出出来ないため……ではなく。退却開始と共に、偵察から戻った竜騎士からもたらされた情報が原因であった。持たらされた情報は、ロンディウムから迫るアルビオン軍の進行速度が、予想より早いというもの。このままでは、明日の昼にアルビオン軍がロサイスに到着してしまう。
生き残った首脳陣による退却作戦が行われたが、迫る時間にただ焦りが募るだけで有用な意見は出なかった。許可が出る前に、撤退準備をしていれば、ギリギリ間に合ったかもしれなかったが、抗命罪を恐れるウィンプヘンには無理な話であった。
ウィンプヘンの保身のつけが、最悪な結果として現れる。
このままでは退却が間に合わず、最悪全滅があるかもしれない。
それを防ぐには、敵軍の足を一日止める必要がある。
しかし、そんな方法などなかった。
空からの砲撃は、散開して進軍するアルビオン軍には効果が薄く。何より肝心の戦列艦隊も撤退に投入されている。
ならば歩兵はと考えるが、装備を捨て逃げ出した兵など投入しても時間稼ぎにもならない。
どれだけ考えても有効な手段が浮かばない。
顔を赤く染め上げ、唸り声を上げ……考えに考えた結果……。
「……ああ、『あれ』があったな……」
何処かスッキリした顔でウィンプヘンは呟くと、歪んだ笑みを浮かべ。
「切り札を使おう……っ! 我が軍は切り札を持って時間を稼ぐッ!! 伝令ッ!」
伝令がルイズを呼びに来た時、士郎たちは撤退のための乗船を天幕の中で待っていた。
日と夜の狭間。
誰彼時に現れた。妙に焦った様子を見せる伝令の姿に、言い様のない悪寒を感じた士郎は、心配のしすぎだと笑うルイズの後をついて司令部に向かった。
気にしすぎだと笑っていたが、総司令官のド・ポワチエや公爵等、首脳陣の多くが戦死していることをその時初めて知ったルイズの笑顔は、やはり何処かぎこちない。
士郎はルイズと共に司令部に入ろうとしたが、それは見張りの兵士のよって遮られ。結局、司令部にはルイズしか入れなかった。十分も経たないうちに司令部から出て来たルイズの顔は、入っていく時と明らかに違っていた。
強張っていたが、士郎に心配をかけないように笑みを浮かべていた顔は、蒼白の上に、唇を噛み締めた悲痛な顔に変化していた。
どんな人間であっても、只事ではないことは分かる。
「待てルイズ」
士郎は黙って脇を通り抜けようとするルイズの手を掴む。
「……離して」
「何を言われた」
「…………」
士郎の問いに、ルイズは俯いたまま何も答えない。
時間が経つにつれ、士郎の中で湧き上がる嫌な予感は、加速度的に大きくなる。
ル
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