第七章 銀の降臨祭
第三話 銀の降臨祭
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「そう? ま、気をつけなさいよ。これから寒くなるんだから、風邪なんか引かないようにね」
ジェシカはルイズに軽く手を振るうと、背中を向けて歩いていく。離れていくジェシカの背中を眺めていたシエスタは軽く頭を下げると、同じように離れようとしたが、足を止め、ルイズに振り返った。
「……ミス・ヴァリエール……これを……」
「? 何これ?」
背を向けたかと思えば、急に振り返り、懐から小さな小瓶を取り出し差し出してきたシエスタに、ルイズは小瓶を受け取りながら首を傾げる。
「……貯めたお金で買った、魔法の『眠り薬』です」
「『眠り薬』? そんなものどうしてあなたが持ってるのよ?」
天幕に吊らされた魔法のランプに、手に持った小瓶をかざしながら、ルイズはシエスタに疑問の眼差しを向ける。
「……ミス・ヴァリエールも気付いているんじゃないですか……」
「何が? って言いたいけど……まあ、ね……」
顔を俯かせる二人の脳裏には、同じ一人の男の姿が浮かんでいた。
ルイズがコトリとテーブルの上に小瓶を置くと、顔を上げたシエスタが、魔法のランプに照らされる小瓶を見つめる。
「……シロウさんが無茶をしそうになったら、これを使ってでも止めてください」
「……無駄になったら……いいんだけど……」
湧き上がる嫌な予感を振り払うように口にした言葉に、シエスタは頷かなかった。そして、きっと自分が感じている嫌な予感を、シエスタも感じているからだろう。
雪が積もり始め、白く色付いていく風景を眺めながら、ルイズはテーブルに置いた小瓶を指で弾く。
空に咲く花に照らされ、雪が積もり始めた建物が、銀色に輝いている。
「……銀の降臨祭……か……」
「……何か俺に用か」
「本当によく分かりますね」
シティオブサウスゴーダを一望出来る、一際高い建物の上に立っていた赤い人影が、顔を動かさず口を開くと、大輪の花が咲いては散る夜空の上から声が降ってきた。
士郎の声に応えたジュリオが、竜の背に乗った姿で空から降りてくる。竜から降りたジュリオは、士郎の横に並ぶと、寒そうに身体に両手を回した。
「ううっ寒い……寒くないんですかシロウさん?」
「……寒いのなら降りればいい」
「降りますよ……聞きたいことを聞いたら、ですが」
士郎の横に立つジュリオが顔を上げる。
「あなたは一体何者なんですか?」
「ルイズの使い魔だ」
顔を横にも上にも向けず、士郎はただ眼下に広がる笑い声が響く天幕を見下ろし続ける。
顔も向けてこない士郎に、ジュリオは眉根を寄せるが、結局何も文句は言わなかった。
「ええ、知っています。ですが、ただの使い
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