第七章 銀の降臨祭
第三話 銀の降臨祭
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何時攻め込んでくるか分からない国に対する積極的な防衛や、侵略による得られる利益とか、色々あると思う。でもそれは、姫さまが反対すれば、戦争は起こらなかったとは言わないけど、こんなに簡単に始まらなかったと思う。
きっと姫さまは今、どうすればいいか分からないんだ。
愛する人が殺され、その悲しみを癒す暇もなく、誘拐や、仇の国からの侵略。そして、それに対抗するために、覚悟や気持ちが固まる前での戴冠……。
自分で選んだようでいて、だけど、結局それは、ただ流されただけ。
何の目的も、展望もなく座った玉座の上で、きっと姫さまが今見えているのは、愛する人の仇を討つことだけ……復讐……だけなんだ。
復讐なんて絶対にダメ……そう言えたらよかった。
昔なら……言えたかもしれない……。
だけど、今のわたしには無理。
だって、わたしも、もしシロウが誰かに殺されたなら……この世界全部を敵に回したとしても、絶対に仇を討つから……そう確信してるから……わたしは何も言えない。
でも、だからって何もしなくて言いわけじゃなかった。
声をかけることも支えることもしなかったわたしにも、こんな戦争が起きた理由の一端をになっている。
もう、戦争を止めることは出来ない。
だから、せめて姫さまが復讐を遂げて、我に返った時、自分が起こしてしまった結果に潰れないようにしなくちゃいけない。
でも、何よりも注意しなくちゃならないのはシロウのことだ。
きっとシロウはわたしの何倍も……何十倍もこの戦争が起きたことで自分を責めてる。
例えシロウがこの戦争が起きることを予感していたとしても。ただの使い魔であるシロウは、一国の女王に何かするどころか会うことすら出来なかった筈なのに。それでもシロウは自分を責める。
きっとシロウはわたしと同じことを考えてるんだろうけど……だからこそ怖い。
それは……知っているから……。
エミヤシロウという男のことを……。
涙が出るほど……馬鹿な男のことを……。
自分のことを顧みらない……。
馬鹿な……『正義の味方』のことを……。
「ミス・ヴァリエール?」
「ルイズ?」
「え? な、何?」
突然声を掛けられたルイズは、コップの底に落としていた視線を上げると、こちらを心配そうに見つめてくるシエスタたちの姿があった。シエスタたちは、互いに顔を見合わせたあと、心配気に眉をひそめながらルイズに顔を近づける。
「どうしたんですか? 随分苦しそうな顔をしていましたけど。酔い醒ましに何か持ってきましょうか?」
「いえ、大丈夫よ。ただ少し……肌寒くて……ね……」
心配気に見つめてくるシエスタたちに顔を振ると、ルイズは口の端を曲げるだけの小さな笑みを浮かべた
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