第七章 銀の降臨祭
第三話 銀の降臨祭
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受け止めしまい、ごくりとそれを飲み込む。
「っ……ん…………すまない……ルイズ」
ルイズが喉を鳴らし、送ったものを飲み込むのを確認した士郎はゆっくりと口を離す。
「え? あっ……まさ……か……し、シロ……ウ……」
唐突に襲いかかってきた眠気に、自身の唇を抑えながら士郎を見上げるルイズ。急速に全身を侵食する睡魔を必死に堪えながら、ルイズは済まなそうに目を伏せる士郎を縋るような視線で見上げる。
「……だ……め……」
睡魔に対抗しようと、ルイズは唇を強く噛み締めたが、一筋の血を唇から流すだけで、睡魔から逃れることは出来なかった。ルイズは悲鳴のような、懇願するような声を上げると、目を閉じ士郎に向かって倒れ込む。
士郎は倒れかかってきたルイズの身体を優しく受け止めると、
「……俺も……愛してるよ」
その耳元に小さく囁いた。
夕日のか細い明かりが差し込む寺院の中。眠り込んでしまったルイズを抱きとめた格好のまま、士郎は背後にある寺院の扉に向け声をかけた。
「出てこいジュリオ」
「……何ですかシロウさん」
士郎の声に応えたのは、美貌の竜騎士であるジュリオであった。寺院の扉の陰から出て来たジュリオは、沈みかけの日の光を背に、ゆっくりと闇に沈み始めた寺院の中に歩いてくる。
「何時もながら覗き見が好きだな」
「何時も何時もバレてしまいますがね」
士郎の言葉に肩を竦め、ジュリオは苦笑を浮かべる。
「ルイズを頼む」
「任せてください。怪我一つなく送り届けますよ」
「……すまない」
ルイズの身体をジュリオに手渡すと、士郎は寺院の扉に向かって歩き始めた。
「何処に行くんですか?」
「ちょっとそこまでな」
「そちらには、アルビオン軍しかいませんよ」
呼び止めるジュリオの声に足を止めることなく、士郎は淡々と答える。
「……いくらあなたでも確実に死にますよ」
特に声高に叫んだ訳ではない。
「死にに行くつもりですか?」
しかし、静まりかえった寺院の中、ジュリオの声は殊更大きく響き渡った。
「死にに行く……か」
寺院と外の境界線。
昼と夜の境界線。
生と死の境界線。
その境界線上で立ち止まった士郎は、
「……そう思うのは仕方ないが……」
闇に沈み始めた大地の上で、
「それは違う」
満天の星空が広がり始める空の下、
「……救いに行くのさ」
誓うように言葉を紡いだ。
「救いに行く……ですか」
最後の日の欠片に向かって歩き始めた士郎の背中を見つめながら、ジュリオはポツリと呟く
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