第七章 銀の降臨祭
第三話 銀の降臨祭
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イズの肩を掴み、強引に自分の方に向けさせると、膝を曲げ視線を合わせた。しかし、ルイズは士郎と視線を合わせない。
「……時間稼ぎか」
「ッ!?」
士郎が口にした言葉に、ルイズは勢い良く顔を上げる。
そこで初めてルイズは士郎と視線を合わせた。
ルイズの瞳は、恐怖と不安……そしてある種の決意が浮かんでいた。
士郎はそれに見覚えがあった。
「……」
死の覚悟を固めた者の顔。
ギリッと、士郎は歯を噛み締める。
顔には何の表情も浮かんでいない。
しかし、ルイズには分かる。
「……一人で、か」
士郎は、今まで見たことがないほどに怒っている……と。
何に怒っているのだろう?
直ぐにはわからなかったが、その理由に気付くと、ルイズの顔に浮かんでいた悲痛な表情が、一瞬だけ柔らいだ。
本当に馬鹿な人。
何でそこまで怒るのだろう?
馬鹿で……愚かで……そして……本当に優しい人。
人のために、そんなに怒るなんて……。
一瞬だけ浮かべた優しい顔を、直ぐに顔を元の決意を含んだ悲痛な顔に戻すと、士郎に掴まれた手を外した。
「もうっ、何で分かるかな……そうよ、正解……大当たり」
士郎から逃げるように一歩、二歩と離れたルイズは、立ち止まるとポツリと呟く。
「死守命令よ……結構細かく指示されたわね」
士郎を背中に、ルイズは肩を竦めてみせる。
「ここから五十リーグ離れた丘の上まで、敵に見つからないよう陸路で向かい。敵が現れたら魔法が尽きるまで虚無を打ち続けろ……ま、一言で言えば、死ぬまで敵を足止めしろってとこかしら」
ハハッと空々しく笑ったルイズは、そこで後ろに立つ士郎に振り返る。
「……付いて来ないでって言っても……聞かないわよね」
「当たり前だ」
悲しげな笑みを浮かべるルイズに、士郎は小さく、しかし重い声で答える。
士郎のそんな様子に目を細めると、ルイズは再度背中を向け、三歩四歩と足を動かす。
「ねぇ士郎。お願いがあるんだけど……いいかな?」
「何だ」
士郎に背中を向けたまま、ルイズは後ろで手を組んだまま身体をもじもじと揺らすと、頬を赤く染める。
「結婚式……しよ?」
「は?」
予想外のルイズの言葉に、ルイズに無茶な命令を下した首脳陣に対する怒りのあまり、無表情になっていた士郎の顔が、ポカンと口を開いた間の抜けた顔になる。
「『結婚式ゴッコ』でいいから……お願い……」
顔だけ士郎に向けたルイズは、顔を真っ赤に染めながら、縋るような眼差しを向けていた。
ルイズが士郎を連れて辿りついた場所は、人気がない小さな寺院だった。
中には誰も居なかっ
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