第七章 銀の降臨祭
第三話 銀の降臨祭
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空に大輪の花が咲き乱れる。
身体を震わす轟音と共に、色鮮やかな花が咲いては散る。
シティオブサウスゴーダのいる者たちは、市民や軍人例外なく皆夜空を見上げ。この一時の間だけ、星や月がその場を譲る華に魅入られている。
空に花が咲くたびに、一際大きな歓声が聞こえるのは、シティオブサウスゴーダの広場に数多く張られた天幕からだ。天幕の下にいる者たちは、連合軍が宿舎として接収した建物から溢れた軍人や慰問隊の者たちであった。その他にも、この時がチャンスとばかりに、集まってきた商人たちが張った天幕もある。 連日連夜お祭り騒ぎのようなシティオブサウスゴーダであったが。一年の始まりを告げるヤラの月。その第一週の初日の本日は、更に燃え上がるような活気に包まれていた。
ハルケギニア最大のお祭りである、降臨祭が始まったのだ。降臨祭は十日間続くため、この熱気は今日から十日間も続くのだ。
酔いによるトラブルを防ぐため、士官たちは、上層部からシティオブサウスゴーダでの飲食を禁じられていた。そのため、士官たちが唯一飲み食いが出来るのは、トリステインから来た慰問隊が開くお店しかなく。広場に張られたそれぞれのお店は、何処もかしこも満員であった。その中の一つ、『魅惑の妖精』亭の天幕の下では、士郎たちの護衛である第二竜騎士中隊やギーシュが酒を飲んでは騒いでいる。
誰も彼もが笑い、歌い、楽しんでいる中、まるで周囲から隔絶されたかのような静かな一角があった。
三人用の丸いテーブルを囲むのは、三人の少女。
三人は時折手に持ったコップに口をつけては、中に入ったワインを少しずつ飲んでいく。飲む速度は遅いが、量はそれなりに飲んでいるのか、三人とも頬を赤く染め、目はとろんと何処か焦点が合っていない。会話は少なく、時折一言二言誰かが喋り、それにいくつか返しがあると、暫らく沈黙が続く。傍から見れば仲が悪いのかと思うが、そうではないだろう。三人の瞳は酒精で揺らめいでいるが、それでも互いに嫌悪の感情は欠片も見えず、時折思い出したかのように始まる会話も、最後には必ず笑みで終わっていた。
「綺麗ね」
星や月を抑え、大輪の花が空に花開き。ドーンっと、遅れて響く音に身体を震わせながら、ルイズがポツリと呟いた言葉に、同じく空を見上げていた二人が頷く。
「はい」
「そうね」
コップに少しだけ残っていたワインをグイっと一気に飲み干したジェシカは、音を立てコップをテーブルに置くと、騒がしい店内をぐるりと見渡す。
「そろそろ、店の手伝いに戻ろうかしら」
「そうですね。もう少しで交代ですし、お酒も抜かないと」
シエスタがテーブルの真ん中に置いてある水が入った瓶を手に取ると、自分とジェシカのワインが入っていたコップにその水を注ぐ。ちびりちびりとワインを飲んでいた時
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